新型コロナウイルス禍でも経営が堅調だった焼き肉店の倒産が増えている。
穀倉地帯であるロシアとウクライナの紛争で牛の飼料となるトウモロコシが値上がりし、食肉価格が高騰する〝ミートショック〟が経営を圧迫しているためだ。
今後も牛肉価格は高止まりが予想され、地元に密着した中小の「街の焼き肉店」の淘汰が進む懸念も強まっている。

「ハラミやタンなど国産和牛の内臓系の肉が特に高騰している」

東京・錦糸町で「炭火焼肉さぶぅ」を13年営む佐藤佳三代表はため息交じりにこう話す。
席数40程度の小さい規模だが地元の人に支持される人気店だ。
だが、「良質の肉は購買力のある大手スーパーや海外に流れ、われわれのような中小の焼き肉店に入りにくくなっている」と訴える。

東京食肉市場によると、和牛(A4・雌)枝肉は建値(目安)となる7月の加重平均価格が1キロ2477円で前年比で約4%、2年前に比べ2割以上も高い。
農林水産省の調査では輸入牛肉(冷蔵ロース)の全国平均小売価格も7月は100グラム327円で前年を1割超上回った。

「中小の焼き肉店の中には卸売りから手頃な肉が手に入らず、大手スーパーから買い付ける店もある」と佐藤氏は明かす。

また、海外の和牛人気の高まりは、国内の和牛肉の流通にも影響を与えつつある。令和3年の牛肉の輸出額は前年比86%増の537億円で過去最高を更新。
4年1~6月は前年同期で5%ほど下回るものの高水準で推移。「円安効果もあり、海外に和牛が流れやすい」(畜産関係者)という。

東京商工リサーチによると、令和3年度の焼き肉店の倒産は18件で、過去最少だった前年度の12件から一転して1・5倍に急増。
18件のうち、負債1億円未満の倒産は16件と約9割を占め、中小規模の焼き肉店の倒産が顕著となっている。

コロナ禍で飲食業が苦戦する中、
強力な換気能力を持つ焼き肉業態は、一人で楽しむ「一人焼き肉」のヒットもあり、消費者に「3密」回避の安心感が認知されて根強く生き残ってきた。

だが、この〝安定性〟に大手外食が注目したことで状況は一変。
居酒屋大手ワタミが一部既存店を「焼肉の和民」に転換し、
大手ラーメンチェーン幸楽苑ホールディングスは一人焼き肉業態「焼肉ライク」を郊外展開するなど、牛肉価格の上昇に新規参入が重なり経営環境が厳しくなった。
東京商工リサーチは、光熱費や食材高騰が続く中、「中小の倒産が高水準で推移する可能性が高まっている」と分析している。

https://news.yahoo.co.jp/articles/229f163b8c24928482e8be096377298fef3370ff