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円安の進展によって金利上昇圧力が高まっていることから、改めて政府の財政問題が注目を集めている。
日本の政府債務のGDP(国内総生産)比は、太平洋戦争末期の水準を突破しており、抜き差しならない状態となっている。
現実問題として、すぐに日本の財政が破綻する可能性は限りなくゼロに近いが、過大な政府債務は日本経済に極めて深刻な影響を及ぼすことになる。

日本の政府債務の残高はすでに1000兆円を突破しており、地方を合わせた合計残高は1244兆円となっている。諸外国と比較しても、日本の政府債務のGDP比は突出して高い(図1)。
IMF(国際通貨基金)の統計では263%となっており、データをカウントできる189カ国中、2番目に数字が大きい(2021年)。

ちなみに1位となったのはベネズエラで、同国は財政破綻によるハイパーインフレが発生しており、3位のギリシャはかつて財政破綻を起こした国である。
4位のスーダンは米国がテロ支援国家指定をしていた国だし、5位のエリトリアは毛沢東主義を掲げる共産主義国家で、憲法すら施行されていない。
政府債務比率が極度に高いのは、国際的に多くの問題を抱えている国ばかりであり、日本のような経済大国でここまでの政府債務比率になっている国は存在しない。
日本の政府債務比率は、すでに太平洋戦争末期の水準を超えており、歴史的に見ても突出して高い水準にある(図2)。

略)
政府債務の問題を指摘すると、必ずと言って良いほど出てくるのが「自国通貨建ての債務なら問題ない」「政府債務比率が何%になれば財政が破綻するという理論はない」あるいは
「国債というのは政府から見れば借金だが、国民から見れば資産なので何の問題もない」と言った反論である。
しかしながら、これらの意見は経済学的にはほとんど意味のないものと考えてよいだろう。順を追って解説する。

債務が自国通貨建てであったとしても、数学的に無限大まで国債を発行すれば財政破綻(あるいは極度のインフレによる通貨価値の毀損)するのは自明の理である。
あくまで頭の体操だが、国債を無限大に発行すれば、紙幣の量も無限大になるので日本円の価値は事実上、ゼロ円となり、財政の継続は不可能となる。

実際、国家予算の280倍もの金額を国債で調達した戦争中の日本は、全額、自国通貨建てであるにもかかわらず財政破綻した。
だが、そうだからといって、どの水準まで政府債務を増大させれば、財政破綻あるいは極度な通貨価値の毀損が発生するのかについて理論的に確定することはできない。
したがって、政府債務比率が100%以上だと破綻する、200%以上だと破綻するといった、学校のテストのような解答は存在しないのだ。
逆に言えば、いくら以上なら破綻するのか理論的に確定できないからこそ、他国との比較で突出して高い場合、その分だけリスクが高いと判断せざるを得ない。