「読者不在」批判の政府刊行「白書」、紙のページ減らす取り組み…オンラインに誘導も(読売新聞オンライン)
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中央省庁が毎年政策の進展や課題などをまとめる「白書」で、紙のページ数を減らす取り組みが進んでいる。おなじみの分厚い冊子は「読者不在」との批判があるためで、オンライン上の本文に誘導するなど、デジタル化の流れに合わせ、簡素化に工夫を凝らしているのが特徴だ。

文部科学省が現在、紙媒体で配布している「2021年度版文部科学白書」は37ページだ。19年度版までは例年450ページ程度だったが、20年度版以降、特集ページ以外の各政策分野の動向はQRコードを読み込むと、文科省のホームページに移動し、本文が表示されるようにした。

総務省の「22年版情報通信白書」は前年版の半分に当たる約250ページに圧縮した。毎年約300ページあった特集ページを絞り込み、データ資料はオンライン上に掲載した。内閣府の「22年版子供・若者白書」も図表は削るなどし、前年版から約40ページ削減した。

政府が発行している白書は現在、約50種類で500ページ超の「大作」も少なくない。簡素化が進む背景には、作業負担の割に広く活用されていないとの問題意識がある。自民党からは昨年6月、「多大な労力で作成され、与党の事前審査を受けているが、国民の政策理解にどれだけつながっているか不透明だ」との指摘があり、見直しが加速した。

白書は、英国の役所が作る報告書の表紙が白く、「ホワイトペーパー」と呼ばれたことに由来する。日本では1947年に「経済白書」(現・経済財政白書)が初めて作られた。同白書が56年に「もはや『戦後』ではない」との名文句で注目を集め、各省庁に広がった。外務省の「外交青書」は57年に始まった。

社会問題の複雑化で、国の方針を定め、白書の作成を求める基本法の制定が相次いでいる。最近では、食育基本法に基づき、農林水産省の「食育白書」が2006年に始まった。今後も新たな白書が誕生する可能性がある。

経済産業省の元官僚で白書作成に携わった経験のある東洋大の安田武彦教授は「白書は紙媒体では読みやすさを重視し、データなどは利用しやすいようにデジタル化を進めることが大事だ」と指摘している。