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ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、反戦や停戦を求める機運は広がらない。ベトナム、湾岸、アフガニスタン、イラク。過去、日本で反戦が大きなうねりとなった戦争と、何がどう違うからなのか。戦後の平和主義について詳しい神戸市外国語大の山本昭宏准教授(歴史社会学)に聞いた。

――ウクライナの徹底抗戦が叫ばれ、「戦争をすべきではない」という反戦や厭戦(えんせん)の声があまり聞こえてきません。

 「日本で反戦運動が盛り上がるのは『加担すること』と『巻き込まれること』を感じやすい『米国の戦争』に対してだったと考えています。例えば、反戦デモが広がったベトナム戦争では、日本の米軍基地から米軍機がベトナムに飛びたつことで戦争に加担しているという意識が背景にありました。2000年代のアフガニスタンやイラクの戦争では、『テロとの戦い』を掲げる米国に加担することで、テロの標的になり巻き込まれることへの反発がありました」

共有されない「戦争は二度とごめんだ」

 「しかし、今回のウクライナ侵攻は米国の関与が間接的支援にとどまっています。日本が加担することも巻き込まれることも感じにくく、巨大な反戦運動にはつながりにくいのです」

 「もうひとつは戦争体験者の減少です。1990年代ぐらいまでは国家の命令で海外に連れて行かれて人を殺したり戦友を殺されたりした経験を持つ戦場体験者がまだたくさん生きていました。家が焼かれ、友達が死に、息子が出征したという戦争体験者も残っていた。こうした体験者の『戦争そのものへの拒否感』が日本社会に反戦の根拠を提供し、長年にわたって戦後日本の平和の土台をつくりだしてきました。しかし、戦争体験者の数は少なくなり、『戦争は二度とごめんだ』という感覚は若い世代にまでうまく共有されていません」

 ――徹底抗戦や即時停戦をめぐる議論をどう見ていますか。

 「ロシアが悪いのは明白です。ですからウクライナの徹底抗戦という態度に否定し難いものを感じてもいます。しかし、戦争体験者がたくさん生きていたら、もっとゼレンスキー大統領に対して違和感を言う人がいてもおかしくないのではないかと思います。自らの戦争体験に基づき、『いかなる理由があっても国家によって人殺しをさせられるのは嫌だ』という思想を持った人が何人も思い浮かびます。彼らだったらプーチン大統領だけではなく、国民に徹底抗戦を命じるゼレンスキー大統領も批判の対象にしてもおかしくありません」

https://www.asahi.com/sp/articles/ASQ8C5SYTQ85UTIL03N.html