橘玲
厚生年金は加入者にとって大幅な損失になっているのだ。
平均的な大卒男性の生涯賃金(退職金を除く)を2億7000万円とし、厚生年金の保険料率18.3%を掛ければ、就職から定年までに収める保険料の総額は約4900万円になる。
それに対して厚生年金の平均受給額は男性で月額約16万5000円、65歳時の平均余命を20年とすると、受給総額は3900万円にしかならない。
あくまでも概算だが、それでも1000万円も損しているというのは衝撃的だ。

年金を破綻させずになんとか維持しようとすれば、現役世代からの保険料収入を増やす以外にない。
このようにして、高齢者の年金を守るために現役世代がどんどん貧しくなる。
日本の人口構成を考えれば、恐ろしいことに、この負の循環はすくなくともあと20年は続くのだ。