ジム・ロジャーズ「このままでは米中戦争は避けられない」
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ペロシ下院議長の台湾訪問は、台湾を含む東アジアの安全保障に一段と脅威をもたらすことになりました。日本の排他的経済水域(EEZ)内に5発の弾道ミサイルが落下し、日本にも緊張感が高まっています。
ジム・ロジャーズ氏もこのまま行けば「10~15年後に米中戦争は免れない」と言っています。
優れた歴史家でもあるロジャーズ氏は、アメリカのグレアム・アリソン・ハーバード大学ベルファー科学・国際問題研究センター所長の「トゥキディデスの罠」を挙げます。
これは、アテネとスパルタによるペロポネソス戦争を分析した古代ギリシャの歴史家の分析を踏まえ、「覇権国家と台頭する新興国家が戦争不可避な状態にまで衝突する可能性」を指した言葉です。実際に、こうした覇権争いは、歴史的にも幾度となく起きているからです。
しかし、一方で、ロジャーズ氏は米中新冷戦時代とも言われる中で「中国『封じ込め』ではなく、むしろ成長の糧とする政策をとるべき」と言っています。
「日本と中国に限らないが、他国との争いは行うべきではない。中国の成長は、結局は中国に投資したアメリカや日本の経済も成長させた。言うならば、Win-Winの関係だった」
しかし、ドナルド・トランプ前大統領のあたりから、アメリカでは反中や反アジア人感情をかき立て、アジア人に対する暴力的な行動がかなり目立つようになりました。
ロジャーズ氏は続けます。
「最近になってアジア人に対する差別を違法とする法律が可決されたが、法律にしたからといって何も変わらず、憎悪や暴力は続いている。これを解決するには、残念だが時間が経つのを待つ以外にすべがない気がしている。同時に、時間は破壊的な影響を及ぼす可能性もあり、時間がもっと悪い方向に事を動かし、結果、実際の戦争を引き起こすこともある。ジョー・バイデン大統領のこれまでの対応で米中関係が改善される動きはまったく見られず、口先だけの社交辞令的な外交を続けているにすぎない。
中国はウクライナ侵攻に対する対応では意見表明を控え気味だが、今後アメリカが中国を最大の競争相手と定め、封じ込め策を打ち出してくることは認識しているはずだ。両国の対立がこれ以上エスカレートしないことを祈っている」
日本の対中戦略に対して、ロジャーズ氏は次のように述べています。
「中国が急激に成長し、アメリカ主導の国際体制を争う意思を鮮明にしたことで、米中間で貿易戦争が始まってしまった。だが私が日本のリーダーだったら、戦いを選ぶのではなく、どうすれば中国の成長に貢献し、ともに成長できるかを考えるだろう。ともに成長する道を見つけることが日本のためになる」