容疑は「デマを広げた」ということだが、保衛部が問題視しているのは、一般住民が知らないはずの安倍元首相銃撃事件について、彼女が知っていたことだ。中国キャリアの携帯電話を持ち、海外とのやり取りをしていると見て家宅捜索を行ったところ、天井裏から油紙に包まれた携帯電話2台が発見された。結局、茂山鉱山専門学校の教員である夫まで逮捕された。

 今回の事件に、近隣住民は驚きを隠せずにいる。
「この夫婦は普段、家庭よりも国のことに忠実だと定評があったのに、近隣住民は彼らが外国の携帯電話を隠し持ち、外部からの情報を聞いていたとは知らなかったと大きな衝撃を受けた」(情報筋)

 一方で、夫婦が「電話が通じない」と言って、あちこちうろちょろしていた姿を見て、怪しいと思い、保衛部に通報した知人もいたとのことだ。

 この知人には、逮捕に協力したということで、大豆油2キロが贈られたとのことだが、口コミネットワークが発達している北朝鮮のこと、あっという間に誰であるかは知れ渡るだろう。そうなれば、自分も密告されるかもしれないと恐れた人々から徹底的に避けられ、日本で言うところの「村八分」にされてしまうかもしれない。

 逮捕された夫婦は、年端の行かない妹と一緒に暮らしていたが、その面倒は一時的に人民班(町内会)で見ており、愛育院(孤児院)に送られる予定だ。ただ、夫婦に下された判決によっては、共に管理所(政治犯収容所)行きになる可能性もある。