受験失敗からおよそ2年。睡眠時間を削り、1日12時間以上をゲームに費やす「闇の時代」が続いていたある日、アルバイト先のファミレス店長から「そろそろ正社員にならないか」と誘われた。当時、大会で優勝するほど熱中していたオンライン対戦ゲームもサービスを終了してしまい、「ずっと目を背けていた問題に目を向けざるを得なくなった」という阿部さん。インターネット掲示板「2ちゃんねる」(当時)で、先延ばしにしてきた進路の悩みを打ち明けると、こんな返信があった。「君はまだ若いんだから、なんでもできるよ」

 阿部さんがよくアクセスしていたのは、2ちゃんねるの中でも、無職やフリーターだったり、「自分はだめだ」と感じていたりする人が集まる掲示板だ。「なんでもできる」と返信をくれた人は「就職氷河期」世代で、リストラされたばかりだと書き込んでいた。

 同じように人生に悩む人からの励ましが阿部さんを変えた。ゲームの時間を全て勉強に充てることを決心し、どの科目をどれだけ勉強したか、定期的に2ちゃんねるで報告することに。「どうせ無理だ」と、からかう投稿も多かったが、何人かは「よく続けてるな」「大丈夫だ」と応援してくれた。目標が定まると、ゲームをしたい気持ちは不思議と抑えることができた。

 匿名の応援に背中を押され、2009年、東海大医学部に合格。在学中は再開したゲームと勉強を必死で両立させ、複数のソーシャルゲームで個人ランキング全国1位、2位という結果を残しながら好成績を維持した。「ゲームが『悪者』なのではなく、やるべきことを放棄してしまうのが問題。ゲームを悪者にしていたのは、のめり込んでいる自分自身だった」。医師国家試験に無事合格したのも、ゲームイベントで準決勝に進出した2カ月後のことだったという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/456679325114f5bd83710c8e4f630e97e762ff7b