東京五輪のスポンサー契約をめぐる贈収賄事件で、舞台の一つとなったのが、受託収賄容疑で逮捕された組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)がオーナーを務める
東京・六本木の高級ステーキ店だった。今月末に閉店予定だという店を訪れてみた。

◆平日昼で満席

高橋容疑者のコンサルティング会社「コモンズ」が運営する「ステーキそらしお」は、六本木のオフィスビル1階に入居する。
高橋容疑者の逮捕後に店を訪れたところ、通常営業中で、平日昼だったが記者の入店直後に満席になった。

店内には2002年日韓サッカーワールドカップ(W杯)の公式試合球や歴代五輪のポスター、有名スポーツ選手のユニホームなどが飾られ、
店の中心付近には東京五輪・パラリンピックのポスターが大きく展示されるなど、スポーツビジネスの第一人者として知られた高橋容疑者の存在感が随所に感じられた。

静かで高級感のある店内だが、敷居が高すぎることもなく、ランチメニューの最低価格は、「ビーフカレー」(税込み1600円)。
コース料理を除けば「和牛サーロインステーキ(150グラム)」(同3600円)が最高価格だ。
ディナーはコース料理中心で、2万円以下のメニューも用意されている。

記者が和牛サーロインステーキを注文すると、間もなくサラダがテーブルに届き、食べ終わるころにはステーキも到着。
焼き加減は注文通りのミディアムレアで、肉も柔らかく食べやすかった。

◆現職議員が絶賛

首相動静などによると、安倍晋三元首相も店を訪れたほか、菅義偉前首相は2020年12月に高橋容疑者と会食している。
あるグルメサイトでは、現職議員が9回にわたり同店を絶賛する投稿をしていた。

同店をめぐっては、高橋容疑者はAOKI側からコンサル料名目で受け取った資金の一部を借入金返済に充てていたとの見方もある。

高橋容疑者の古巣、電通が入居するビルの46階には系列店の「ソラシオ汐留」も入っていたが、20年春に閉店した。

両方の店を訪れたことがあるグルメジャーナリストの東龍(とうりゅう)氏は「ステーキそらしおは、以前はランチメニューにサラダなどのハーフビュッフェがつく1000円台からのメニューもあり、
昼どきは毎回混み合っていた。
ソラシオ汐留はフランス料理のコースが中心で高層ビルの展望を楽しむデートレストランだった。
ディナーコースには1万円台のメニューもあり、予約なしの入店は困難な人気だった」と話す。

ステーキ店側は、閉店は事件と無関係だとしている。