「父さん、俺、東京へ行く」
 「え!?」 と利喜次郎はびっくりしました。
 「東京へ行って、もっと勉強をしたい」
 「東京ってお前、江戸のころと違って薩長が勢いを持っているんだぞ。そんなところで…」
 「だから勉強するんだ。政治家や軍人は薩長が独占しているか知れないけれど、学問は一人一人の頭の問題だから、薩長の派閥で独占というわけにはいかないだろう。才能があれば世の中に認められる。俺、もっと勉強して、自分の才能を力一杯試してみたいんだ」  「でもなぁ」
 「会津にいたって、やれることは限られている。俺は会津が好きだ、大好きだ。だから学問で身を立てて薩長の奴らを見返してやりたい」

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