スペインのタコ養殖に保護団体ら非難 「タコのような知的な動物の商業養殖反対」(みなと新聞)
https://news.yahoo.co.jp/articles/17355c98698faa290690cd5bfbdbd8799319ed4c

スペイン・ガリシア州に本部を置く水産企業、ヌエバ・ペスカノバ・グループが計画しているタコの養殖事業を巡り、国際的な自然保護団体や研究者の間から強い非難の声が上がっている。「タコは知能が高く好奇心の強い動物で、劣悪な商業養殖は倫理的に問題がある」などの理由からだ。同社はアフリカ大陸の北西沿岸に近い大西洋上に位置するカナリア諸島に世界初となるタコの養殖施設を建設し、2023年から市場への出荷を予定している。

関係者によると、ペスカノバ社は長年、タコ養殖に向けて研究を重ねてきており、カナリア諸島内のグラン・カナリア島にあるラス・パルマス港にタコ養殖の専用施設を建設。年間3000トンのタコを水産市場に供給する計画を進めている。企業秘密だとして、水槽の大きさや養殖密度など施設規模の具体的な内容は明らかにしていない。

頭足類のタコは一般的に、知能が高く好奇心も強いため縄張り意識が強く、閉鎖的な環境では攻撃性が高まり共食いの危険があるなどと指摘されている。また苦痛を与えない屠殺(とさつ)方法も未解明であるため、動物福祉を規定する欧州連合(EU)の動物保護法の対象にはなっていない。

こうした事情から、動物愛護団体や環境保護団体、海洋生物学者などは同社の養殖事業に強い疑念と反対を表明している。スペインの動物保護政党PACMAは最近、国際的な団体の支援も受けて養殖場近くで反対集会を開催し、「タコのような知的な動物が搾取されるようなメガファームの開設には反対」と訴えた。また国際的な動物保護団体の「コンパッション・イン・ワールド・ファーミング」は報告書の中で、海洋生物学者の主張を紹介し、「タコの集中養殖は『災いのもと(recipe for disaster)』である」と警告している。

ペスカノバ社は2019年にマダコの完全養殖に成功。マダコは大西洋や地中海、アフリカ大陸北西のモーリタニアに生息しており、主にスペインやイタリア、ギリシャ、日本で消費される。ライフサイクルは2~3年。近年マダコ需要が国際的に増えるにつれ、天然タコの希少性は高まっている。

[みなと新聞2022年8月23日付の記事を再構成]