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ペットの葬儀が高額に 読経や火葬、「家族化」一段と

大切な家族として丁重に弔いたい――。亡くなったペットの葬儀にお金をかける人が増えている。専門の葬儀会社による火葬サービスや読経付きなどの高価格プランの利用が活発になってきた。新型コロナウイルス禍でペットと過ごす時間が長くなったことも、ペットの家族化という近年の傾向に拍車をかけているようだ。

2021年末に17年飼っていた犬を亡くした50代女性は「家族の一員だったから、きちんと見送ってあげたいという気持ちがあった」と話す。火葬の前に読経付きの簡便な式があり、火葬後はお骨を拾う形式でかかった費用は2万3000円。女性の住む自治体に依頼すれば500~1000円程度で市から委託を受けた会社に引き取ってもらえるが、自身で葬儀場に連れて行き、遺骨も持ち帰る方法を選んだ。

お墓や終活サイトの「ライフドット」の20年から21年にかけての調査によると、ペットの供養にかけた費用は「1万円以上5万円未満」の人が37.6%と最も多い。5万円以上かけた人も合計で24.4%を占め、1万円未満の22%を上回った。ペットの墓の予算も「1万円以上5万円未満」が26.5%と最も多く、「5万円以上10万円未満」が19.1%で続いた。10万円以上かけたと答えた人は1万円未満より多かった。
亡くなったペットは自治体に処分を頼むほか、自宅の庭に埋める、民間の専門会社に頼むなどの方法が考えられる。昔は専門の火葬も少なく、庭に埋めるなどお金のかからない方法が多かった。今でも東京都内で自治体に処分を依頼した場合の費用は3000円前後で済むが、高額になっても民間企業に依頼する人も多い。

民間によるペットの葬儀は大きく3つ。複数頭を同時に火葬する合同葬、1頭ずつ火葬する個別葬、飼い主との別れの時間を設けたり、遺骨を拾ったりする立ち会い葬だ。

東京動物霊園(東京・北)では、5~10キログラムの中型なら合同葬が1万9800円、個別葬が2万7500円、立会葬が4万9500円。5年ほど前から立会葬のプラン内容に読経やお別れの時間などを設けたところ、利用者が1.5倍程度に増えた。「手厚く葬りたい人が年々増えた」(担当者)ことから、ペットの遺毛や遺骨、ひげを保管できるケースや写真入りの位牌(いはい)なども充実させている。

お経をあげたり、人とペットが同じ墓に入れるようにしたりする霊園も増えている。24時間お参りできる施設を備えるなど、独自のサービスを強みにする霊園もある。イオングループの葬祭事業会社イオンライフの竹内久貴営業開発部長は「人の葬儀を扱う企業がペット向けに参画するケースも目立つようになり、サービス充実が進んでいる」と話す。

背景としては、ペットの家族化が進んだことが大きい。例えば犬では小型化も進んで室内飼いの割合が増加傾向にある。

コロナ禍に伴う在宅生活もペットとのふれあいを増やした。ペットフード協会の調査では、4割の人がコロナ前と比べてペットと過ごす時間が増えたと回答した。1頭にかけるお金も増加傾向にあり、犬の生涯必要経費は244万8千円と、20年に比べ40万円弱増えた。

同協会の山本敏城事務局長は「ペットとのコミュニケーションが増えた結果、医療費やトリミング代などに従来よりもお金をかけるようになっている。ちゃんと葬式を出したいという思いにも重なっている」と指摘する。

人の葬儀でも、近親者を中心に温かく見送る「家族葬」を選ぶ人が増えている。コロナ禍では家族など「身近なつながり」の価値が見直され、今後もそうした傾向は強まると思われる。ペットとの生活や葬儀にお金をかける傾向も、人と同様、身近なつながりへの関心の高まりを映しているのかもしれない。