安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件で、警察庁は25日、1発目の発砲直前に山上徹容疑者(41)の存在に気付いていれば、「(犯行を)阻止できた可能性が高かった」と認定した。中村格(いたる)長官(59)と奈良県警の鬼塚友章本部長(50)らは辞職を表明、警察トップと県警トップらが事実上の引責となったが、失われた命は取り返しがつかない。

【写真】安倍元首相の四十九日に銃撃された現場で手を合わせる姿が多くみられた

安倍氏は7月8日、ガードレールに四方を囲まれたエリアで演説中に、背後から近づいてきた山上容疑者に手製の銃で撃たれた。1発目は安倍氏に当たらなかったが、SPらは容疑者に気付くのが遅れ、約2・7秒後の2発目を防げなかった。

中村氏は25日の記者会見で「重大な結果を招いたことを極めて重く受け止めている」と改めて発言。「問題の根底に、都道府県警の責任で警護を実施する現在の仕組みに限界が生じていることがある」と述べた。

2021年9月に全国の警察組織の頂点に立った中村氏。警察庁内では「任期は2年」ともささやかれていたが、1年足らずでの辞職となる。警察庁長官が個別の事件の責任を取り辞職するのは異例だが、首相経験者が死亡するという結果は重かった。

一方、鬼塚本部長は25日、県警本部で辞意を表明した。ハンカチを手にして目に涙を浮かべ、何度も頭を下げた。「敬愛する安倍元首相が亡くなったとの知らせを受け、衝撃と責任の重さに押しつぶされそうになる毎日だった。事態の重大さに鑑み、職を辞して責任を取るべきだと判断した」と語った。松浦克仁警備部長(59)も辞意を表明。警備部参事官(60)も辞職する。

警察庁は警護計画の基準を作成し、都道府県警が作成した計画案も全てチェックする。警護に関する新たな部署を新設して職員を大幅に拡充するなどの取り組みを行う。失った信頼を取り戻せるのか。

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