もしもプーチン大統領と2人で飲みに行ったなら…本場仕込みの「取りあえずビール」?【ウラジーミル・プーチンとは何者か】(日刊ゲンダイDIGITAL)
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【ウラジーミル・プーチンとは何者か】#74
ロシアのプーチン大統領とは何者か──。世界中の専門家らが議論した。ああでもない、こうでもない。正気なのか、狂気なのか。病気か、健康か。堂々巡りで不毛になりがちな議論に、終止符を打つ方法が一つある。本人と一対一で飲みに行けば分かるのではないか(可能であればの話)。
■東独ドレスデンの行きつけ
豪華なパーティーや公式夕食会ではだめだ。できれば、遠い昔に通ったような場末の酒場が良い。2時間くらいあれば、なお良い。
「何にします?」とあなたが聞いたら、元スパイは答えるだろう。
「久々にドイツビールかな」
元柔道家で健康管理に余念がないから、アルコールは飲まなそうに見えるが、日本酒もワインも、ほどほどにたしなむ。豊かさと安定をもたらす政治家は、1990年代の貧困と混乱をもたらしたエリツィン元大統領のアンチテーゼ。ウオッカで酔っぱらうことはない。
黄金の液体に一口付けた大統領。二口目にはこう言うのではないか。
「好きだけど、控えめにしている。ビール腹になるからね」
これは2018年、自身が実際にインタビューで口にした言葉だ。
ビールには思い入れがある。旧ソ連国家保安委員会(KGB)工作員として80年代に赴任したのが、東独ドレスデンだった。気に入った銘柄は地元「ラーデベルガー」。ザクセン州で醸造されているドイツ最古のピルスナーで、国内十指に入るといわれる。当時は供給が不足がちだったが、大体これを注文していたという。
報道によると、酒場「アムトール」のスタッフは、若き日のスパイについて「毎日来ていたわけではない。もっとも当時は誰も知らなかったけれど」。ドレスデンの指定席はその後、ちょっとした名所となったらしい。ウクライナ侵攻前の話。
■「馬の小便」で庶民アピール
ドイツといえば、長らく相手を務めたのがメルケル前首相。プーチンがインタビューで冗談めかしていわく「彼女は時々、ラーデベルガーを何本か用意してくれる」。訪独の際は「食事は何がいいかしら。ああ、ビールね」と事前にやりとりがあったという。
ビールは、ロシアでも政治の道具になる。12年5月の通算3期目就任直前、プーチンはモスクワのビアホールを訪れた。注がれるのは、かつて「馬の小便」と揶揄された旧ソ連の銘柄「ジグリョフスコエ(ジグリ)」。この頃、ただでさえ首相から再登板するのを庶民に批判されていたから、高級ワインを傾けるわけにはいかなかった。 =つづく
(文=平岩貴比古/時事通信社元モスクワ特派員)