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パシリになった24歳国税職員、不動産美人OL、元ヤン日体大生…2億給付金「男女7人詐欺物語」

国税職員を含む男女グループが新型コロナウイルスの持続化給付金を搾取した事件で、8月23日、関与した佐藤凜果被告(22)の初公判が東京地裁で行われた。罪状を認めた上で、詐欺に加担した動機を「老後に不安があった」と説明した。
 相次ぐコロナ給付金の詐取事件。国税職員も加わった男女グループは得意分野ごとに役割分担し、無知な若者を食い物に。さらに主犯は9億詐取の“三重一家”同様、海外に高飛び――。罪悪感なき詐欺師たちの素顔を暴く。

「実は、中峯が約3年前から信奉していたのがマイニングエクスプレス(ME)という仮想通貨関連事業でした。マイニングとは、暗号資産の取引を記録する作業への報酬として暗号資産を得る仕組み。MEは電気代が安く気温が低いウクライナにマイニングの工場拠点を置くことで、低コストの作業が実現できると喧伝。月7%前後の高利回りの配当に加え、別の投資者を勧誘すれば、数%の報酬を得られるという典型的なマルチ商法です」(捜査関係者)

 秋葉原のセミナー会場で撮影された1本の動画。そこには中峯が緊張の面持ちで観客に対してスピーチするシーンが収められている。

「韓国の友達にも声かけてるんで、世界にどんどん広げていきたいと思います」

 そう語った中峯を祝福し、慣れた様子でマイクを握ったのが松江大樹(31)。彼こそがMEの大幹部であり、給付金詐欺グループのトップに君臨している男だ。
グループのトップに君臨した男の正体
「中峯が心酔していた松江はMEの若手トップリーダー。40億円の売上を達成し、インペリアルダイヤモンドというタイトルを持っていた。オレンジ色のランボルギーニを乗り回しています」(MEの元メンバー)

 イベントの登場シーンに用いられていた松江の“自己紹介動画”。約4700万円のロールスロイス・レイスから颯爽と降り立った松江の腕には、1300万円以上のリシャール・ミルが巻かれている。
「木更津で定期的に開かれるバーベキュー大会には、松江ら大幹部が全員ランボルギーニやベントレーで登場。高校生や大学生の参加者に対し、『乗ってみる? MEで頑張れば普通に買えるようになるよ』と成功者になった気分を味わわせ、“洗脳”していくのです」(別の元メンバー)

 91年2月、大阪府に生まれた松江は関西学院大を卒業後、NECに入社。だが、会社勤めだけでは飽き足らず、23歳の頃に投資用マンションを購入する。松江の知人が言う。

「投資にハマり、FXやバイナリーオプションで一時期は大損しましたが、仮想通貨で盛り返し、25歳で退社。恵比寿にレストランを作ったのです。ローストビーフで1発当て、六本木や横浜などに店舗展開。28歳の頃に出会ったのが、MEだったのです」
渋谷区の高級住宅街に派手な若者が出入り
 幹部らが売上獲得にしのぎを削る中、松江を頂点にしたグループは、やがて違法な集金活動に傾斜していく。給付金詐取のスキームを考案し、松江に進言したのは中峯だった。その後、組織はそれぞれの得意分野に応じて巧みに役割を細分化。グループ傘下の中村上総(24)が指南役を担い、税のエキスパートの塚本晃平(24)が確定申告書類の偽造を担当。“紅一点”の佐藤は中峯に促され、オンライン申請を行った。

 渋谷区の高級住宅街に佇む築56年の木造2階建て住宅に、身なりの派手な若者が出入りし始めたのは昨年のことだった。グループの集金役だった会社役員・濱口正太(26)と、勧誘役の日体大生・海老原列(22)。彼らの役割について前出の捜査関係者が明かす。

「濱口は集めた現金を親族が所有する渋谷の家に隠し持ち、他の指示役に分配していた。一方の海老原は不正受給をする大学生を勧誘し、無事に100万円が振り込まれると、それを濱口に手渡す役割を担っていた」

西武台の野球部出身「彼は元ヤンキーだから」
 2000年5月、東京・板橋区に生まれた海老原は野球の強豪校である埼玉の西武台高校に進学。野球部で日々練習に汗を流す一方、学級委員長としても活動していた。元野球部員は「彼は元ヤンキーだから」と苦笑交じりに証言する。

「地元は池袋で『中学のときは喧嘩しまくったわ』と言って自慢していた。高1の頃、些細なことで部員と揉めて、いきなり部室で掴みかかったこともあった」