問題は、政府が国民に隠している経費の全体像だ。まず警備費である。政府は195カ国と4地域、約80の国際機関に国葬の日程を通知した。

 国際機関を含め165の国と地域から国家元首など254人が参列した2019年10月の「即位の礼」を参考にすると、警察庁は当時、警察官約2万6000人を動員。警備関係費用として28億5000万円を支出していた。

 安倍氏が銃撃されて横死したことにより、今度の国葬は一層の警備強化が見込まれる。警察OBも一部メディアで、警備費が30億~35億円に上る可能性を指摘している。

 一方、接遇費をめぐっては、外務省が29日の野党合同ヒアリングで「旅費や宿泊費というものは(日本政府が)負担することはないと想定している」と答えたが、あくまでも現時点の「想定」に過ぎない。現職の大統領や首相の滞在費なら、相手国が負担するケースはあるだろう。しかし、個人で参列する元職の場合はどうか。

 例えば、アメリカのトランプ前大統領が参列したとして、バイデン政権が旅費・滞在費を負担するのかどうか。負担しなかった場合、外務省はトランプに都心のホテルを予約させるのか。疑問は拭えない。

 仮に滞在費を日本側が負担すると、経費はどれだけ膨らむ可能性があるのか。「即位の礼」の際、外務省は19年度の当初予算に「接遇等に必要な経費」として約48億円を計上。滞在費だけでも約35億円に上った。安倍国葬も通知した国の規模を踏まえると、来日する海外要人は同レベルの数が見込まれる。

 警備費が最大35億円、海外要人の滞在費が「即位の礼」と同規模だとすると、国葬の実施経費は、ざっと見積もって最大70億円に膨れ上がる。実に政府発表の28倍だ。

 かつて吉田茂元首相の国葬をめぐり、実施直後の国会で共産党議員が「(国葬は)佐藤(栄作)首相の一存で決められた」「非常に後味の悪い問題を残しておるわけです」と指摘していた。岸田首相の鶴の一声で決まった安倍国葬も、大量の国費を費やした挙げ句、「非常に後味の悪い」ものになりはしないか。