ブルックスは、週4日勤務制について情報を集めた。彼女のビジネスは、クライアントの締め切りに沿った従業員の配置が必要なので、金曜日に事務所を閉鎖することはできない。その代わり、従業員に週の中から休みを1日選ばせ、週4日勤務を10週間、試験的に実施した。週5日の40時間勤務ではなく、週4日の32時間勤務に切り替えたのである。

「同じチームの二人が同時に休みをとることはできなかったが、導入当初はうまくいっていた」と、ブルックスは振り返る。

「実は、クライアントには勤務体制の変更については伝えませんでした。私たちは、クライアントに気付かれずに週4日勤務をやり遂げたら成功だと定義づけていたのです」

当初、従業員たちはこの新しい制度を歓迎していたものの、結果となると従業員のあいだでも意見は割れた。会社からは明確な通達があったにもかかわらず、休みの日にもちょっとした仕事をしたり、メールを返信したりする従業員がいたのだ。

「性格によるようだ」と、ブルックスは言う。

「休みの日に働くことは仕方がないと諦める従業員もいれば、『出勤したらやればいいし、他の人がカバーしてくれるだろう』と仕事とプライベートの線引きができる従業員もいました。どちらも間違ってはいません。どちらも正当な勤務態度です。

しかし、従業員の間で一貫性がなかったために、混乱や戸惑いが生まれ、社内の士気に影響を及ぼしました」

さらに、ブルックスのチームは毎週の報告を義務付けられていた。

「長期休暇後に出勤して、仕事に追いつこうとする感じ、わかりますよね? 私たちは、休んでいるあいだに起きたことを隅々まで把握できず、仕事の質が落ち始めたことに気づきました」

10週間後のアンケート結果では、従業員の満足度が低下したことがわかった。この取り組みによって、軽減されるはずだった従業員のストレスはかえって増していたのだ。

「従業員たちは休みの日に完全にリラックスすることができなかったようだ」とブルックスは言う。

「どれだけ仕事とプライベートの線引きがしっかりとできている人でも、仕事の遅れとそれを取り戻すことへの、緊張・ストレス・不安を拭えませんでした」

週4日勤務制は、疲労を軽減し、息抜きの時間を与えようという善意から生まれた対策だ。しかし、職場にデメリットをもたらす可能性もあると、臨床心理学者であり、職場のメンタルヘルスをテーマにしたプラットフォーム「モダン・ヘルス」の臨床戦略・研究チーム副リーダー、マイラ・アルトマン博士は言う。

「たとえば、仕事量が多く、大きなプレッシャーを抱えながら働く業界では、従業員が休日であっても残業申請せずに働いています。そんな業界で週4日の勤務を義務付けると、組織の残業時間制限内で業務を遂行することになるため、従業員の士気向上につながります」

週4日勤務制の導入を成功させるには、燃え尽き症候群を引き起こすような組織的な原因を排除する必要がある。「組織的な要因にも同時に対処していかないと、週四日の勤務はさらなる問題を引き起こしかねない」と、アルトマン博士は指摘する。

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