労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で分科会長が省令改正などの「諮問に向けた準備を」と述べ、議論をまとめた。企業から労働者への賃金の支払いは労働条件の最低基準などを定める労働基準法に定められ、厚労省が所管している。

賃金の支払い方法は現金払いが原則で、例外として銀行口座と証券総合口座も認めている。厚労省は年内にも同法の省令を改正し、資金移動業者の口座も対象に加える。早ければ来春にも解禁する。

2年前に始まった審議会の議論では、給与がきちんと管理されることを求める労働者側との意見調整が長引いた。導入に向けて議論がまとまったのは、給与振り込みの対象となる決済サービスに厳しい制約をかけたからだ。

今回の議論では、決済サービスを手掛ける事業者が経営破綻した時に、4~6営業日以内に口座残高の全額を支払うための保証の仕組みを設ける。一定の保証料を払って民間の保証会社と契約する枠組みが想定される。事業者は財務状況などを厚労相に報告できる体制などの要件を満たし、厚労相の指定を受ける必要がある。

デジタルマネーとして振り込まれる給与は1円単位で引き出しができ、月1回は手数料なくATMで受け取りができるサービスの設定も求める。口座残高の上限は100万円とする。資金移動業者は80程度あるが、指定要件を満たすのはごく一部の業者になるとの見方もある。

利用者の利点は、決済アプリなどに給与から定額が振り込まれれば、残高に「チャージ」する手間が少なくなることだ。最近は利用者の減った銀行などが、ATMによる現金引き出しの手数料優遇を縮小している。現金払いからデジタル払いに切り替えれば、手数料の負担を減らせる可能性もある。