一般内科医も知って!「アナルセックス」の害|最新医療ニュース|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト
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欧米では、異性間での肛門性交渉(アナルセックス)経験者が低年齢化しているとされている。英・Sheffield Teaching Hospitals National Health Service(NHS) Foundation TrustのLesley M. Hunt氏は、肛門括約筋が弱い女性ではアナルセックスによる肛門損傷リスクが特に高まることから、当該診療科の泌尿器科はもとより大腸肛門科や一般内科の医師も診断の見落としとならないようBMJのEditorials(2022年8月11日オンライン版)で注意を促している。

肛門損傷は女性でより深刻

英・National Survey of Sexual Attitudes and Lifestyleによると、16~24歳の異性間肛門性交経験の割合は1990~91年が10人に1人だったのに対し、2010~12年には男性の約4人に1人、女性の5人に1人に増えているという(JAdolesc Health 2017; 61: 694-702)。米国でも同様の傾向が見られ、30〜44%の男女がアナルセックスを経験したことを報告している(AIDS Behav 2016; 20: 2966-2975)。

今回、Hunt氏はアナルセックスの問題として、健康リスクとそれに対する認識の欠如を指摘している。

まず健康上のリスクについては、アナルセックスは飲酒、薬物の使用、複数のセックスパートナーとの関連性が指摘されているリスクの高い性行動と考えられている点だ。これに加え、腟分泌物量の低下、肛門の摩耗や、コンドームの装着が一般的でないことによる性感染症および悪性腫瘍のリスク上昇などもある。

さらに肛門括約筋が弱く肛門管圧が低いなどの理由から、アナルセックスによる肛門損傷は女性でより深刻で、アナルセックス後の疼痛や出血は外傷によるものと考えられる。

同氏は、泌尿器科以外の診療科ではアナルセックスに関する問診は一般的ではなく、多くの診療科の医師がそのような質問をすることをタブー視すれば、アナルセックスによる健康リスクがさらに見落とされ、医学的アプローチの機会が失われかねないと訴えている。

中立的で偏見のない問診を

健康リスクに対する認識の欠如について、Hunt氏は「NHSの患者向け情報では、アナルセックスについては性感染症のみを考慮しており、肛門外傷、失禁、アナルセックスの強要による心理的後遺症には言及していない」と指摘。またインターネット情報の中には、アナルセックスへの試みを後押しするようなものもあり、リスクに言及する医師が同性愛嫌悪者と誤解されることもありうる。

しかし、同氏は「アナルセックスに関する適切な健康リスク情報があれば、それまで行為を望んでいた女性が回避したり、パートナーを喜ばせるために渋々応じるような女性が断ったりするなどして、自身を守ることができる」と主張。「特にクリニックの医師、消化器内科医、大腸外科医は、中立的で偏見のない問診を行って若年女性のアナルセックスをめぐる社会の変化に対応すべきである」と述べている。

(田上玲子)

(Medical Tribune=時事)
(2022/08/16 11:08)