「会長は裸の王様」「逆らえない社風」、社員に衝撃と怒り…経営多角化の角川容疑者逮捕 : 読売新聞オンライン
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電撃文庫創刊に際して

 文庫は、我が国にとどまらず、世界の書籍の流れのなかで“小さな巨人”としての地位を
築いてきた。古今東西の名著を、廉価で手に入りやすい形で提供してきたからこそ、
人は文庫を自分の師として、また青春の想い出として、語りついできたのである。

 その源を、文化的にはドイツのレクラム文庫に求めるにせよ、規模の上でイギリスの
ペンギンブックスに求めるにせよ、いま文庫は知識人の層の多様化に従って、ますますその意義
を大きくしていると言ってよい。

 文庫出版の意味するものは、激動の現代のみならず将来にわたって、大きくなることはあっても
小さくなることはないだろう。

「電撃文庫」は、そのように多様化した対象に応え、歴史に耐えうる作品を収録するのはもちろん、
新しい世紀を迎えるにあたって、既成の枠をこえる新鮮で強烈なアイ・オープナーたりたい。
 
その特異さ故に、この存在は、かつて文庫がはじめて出版世界に登場したときと、同じ戸惑いを
読書人に与えるかもしれない。
 
しかし、<ChangingTime,ChangingPublishing>時代は変わって、出版も変わる。
時を重ねるなかで、精神の糧として、心の一隅を占めるものとして、次なる文化の担い手の
若者たちに確かな評価を得られると信じて、ここに「電撃文庫」を出版する。

1993年6月10日  
角川歴彦