一方の私は、あることで安倍に聞きたいことがあり、こう切り出した。

「井上さんが旧統一教会で『祝福』を受けたとの情報が入りました。事実ですか。どういう経緯だったのでしょうか……」

「井上さん」とは、第1次内閣で安倍の秘書官を務め、この7月の参院選に自民党比例代表の枠で出馬していた井上義行のことだ。この電話の2、3日前に、旧統一教会と接点が生まれたとの噂を耳にしていた。

「そうだね……」

 言葉少なに安倍は答えた。

 長きにわたり取材を続けてきたが、安倍の周囲で「旧統一教会」の名前を聞いたのはこの時が初めてだった。

 私はその時、表現しがたい違和感に襲われた。というのも、私が大学に入学した際、自治会や学部の先輩などが、旧統一教会の下部組織である「原理研」に対して、徹底した注意喚起を行っていたことが思い出されたからだ。

 また当時、同級生とその家族が、同団体に苦しめられた経験も鮮明に蘇った。正直なところ、四半世紀以上の時を経ていたこともあり、団体の存在すら忘れていた。

 安倍は私の問いにこう答えた。

「私自身は、さほど関与していないから……」

 2021年9月、安倍は旧統一教会の友好団体「天宙平和連合」のイベントにビデオメッセージを寄せている。山上徹也容疑者はこの映像をみて「殺害を決意した」と供述した。安倍は、日ごろから、多忙を極める中でも会場に駆けつける場合と、逆にビデオメッセージだけで済ませる場合がある。こうした使い分けで交流関係に違いを出し、ある種の距離感を滲ませていた。

 そのうえで安倍の言葉を振り返ると、祖父・岸信介の時代における旧統一教会との経緯や、米国との関係などを踏まえつつも、徐々に距離を置こうとしていた様子がうかがわれた。ただ、この話題は結局それ以上続くことなく、その他、参院選の情勢や、派閥「清和会」の現状などについて話をした。

※抜粋※