『雨を告げる漂流団地』はおそらく日本の団地をモチーフとした映画で最後の傑作となるアニメである。決して大仰に言っているわけじゃない。そもそもの団地自体がいま日本各地で建て替えや取り壊しが続いており、団地の時代が終わり始めているからだ。

団地は戦後の住宅難を解消するための施策であると同時に、新たなライフスタイルの象徴でもあった。団地の誕生によって家族の形からある種の社会の形まで変わったことは、各時代のフィクションなどからうかがえる。しかし近年は老朽化などに伴い、各地で建て替えなど今後を問われる状況にある。

そんな消えゆく団地の時代を、本作はなんとストレートな冒険映画に仕上げているのだ。『陽なたのアオシグレ』(2013年)や『ペンギン・ハイウェイ』(2018年)の石田祐康監督は、海を漂流し、沈みゆく団地を描くことで現代の団地の状況を象徴してみせる。
2時間の上映時間にて少年少女のダイナミックな冒険を描くのと同時に、昭和から現代につらなる団地の時代の終わりを観客に体感させる驚異的な一作である。


IGN Japan: レビュー:『雨を告げる漂流団地』おそらく団地映画、最後の傑作.
https://jp.ign.com/drifting-home/62475/review/