8月に北アルプスで発生した山岳事故で人命救助に貢献したとして、岐阜県警高山署は15日、北飛山岳救助隊員の中林裕二さん(50)=高山市奥飛騨温泉郷栃尾=に署長感謝状を贈った。

署によると、同月15日朝、1人で登山に来ていた奈良県の男性(57)が奥穂高岳からジャンダルムに向かう途中の岩場、通称「ロバの耳」で足を踏み外し、約30メートル下に滑落。左脚などを骨折して身動きが取れなくなり、119番した。
穂高岳山荘の支配人である中林さんは、常駐していた山荘から県警山岳警備隊員と現場へ向かった。 ロバの耳は非常に険しい岩場で、当時は悪天候。けがの程度からも背負って救助することは難しく、中林さんらは「ビバーク(野営)しかない」と判断した。
近くの平らなスペースへ男性を引き上げた後、2人ずつ交代で付き添って4泊し、天候の回復を待ってヘリコプターで市内の病院へ搬送した。
ビバーク中は下から吹き上げる強風と雨で「体感では氷点下近かった」と中林さん。「とにかく体が冷えないように」と男性を毛布などでぐるぐる巻きにし、落石から守ったという。
男性の体調が回復に向かった3日目以降、中林さんは現場を離れた。男性が無事に下山したことを「うれしかった。よく頑張ったなと思った」と振り返った。

高山署で贈呈式があり、西脇克児署長が「勇気があり的確な行動が、人命救助につながった」と感謝。秋の登山シーズンを前に、登山者へ「レジャーという感覚ではなく、登山は命懸けだという気持ちを忘れず、しっかりと準備をして臨んでほしい」と呼びかけた。
岐阜新聞社

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