「マンボウは死にやすい」日本独自のイメージ

――ほかに、マンボウの産卵や繁殖についてわかっていることはあるのでしょうか?

繁殖期になるとマンボウが集まる産卵場が、世界のどこかにいくつかあるはずなのですが、詳しいことはわかっていません。ただ稚魚の発見状況からも、日本沿岸には産卵場はないのではないかと私は考えています。

――産卵場にたくさんのマンボウが集まるのであれば、特定の性質をもつ個体が繁殖に有利になることもありえそうですよね。

マンボウ同士のコミュニケーションについては詳しくわかっていませんが、複数個体を同じ水槽で飼育している水族館の人によると、強い個体、弱い個体、という違いはあるようです。

エサやりをするときにけんかをしたり、弱い個体が強い個体から逃げたりすることもあると聞きます。もしかすると、マンボウにも社会性が存在しているかもしれませんね。

――マンボウの繁殖についてわかると、どんなことにつながっていくと思いますか?

生態系のなかでマンボウがどう生きているかがわかります。また、マンボウの数に関わる話としては、マンボウはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストにおいて現在絶滅危惧種に指定されています。

とはいえ、現状ではマンボウの生息数が正確に把握できているとはいえないので、適切な評価をするのは難しい状況です。ですが、今後データが集まってくれば、本当に保護が必要な動物なのかどうかを考えていけると思います。

――マンボウはよく「死にやすい」としてネット上で「ネタ」として扱われていますが、今回おうかがいした「3億個の卵が…」の噂もこうしたイメージを加速させていると感じます。

そうですね。そもそも「マンボウは死にやすい」というのは、ネット上に書き込まれた真偽不明の情報が発端で、Wikipediaや2ちゃんねる、SNSなどのインターネットのツールの発達とともに広がった日本独自のイメージです。海外ではこんな話は聞きません。

「3億個の卵が…」の知見も、100年間の伝言ゲームと連想ゲームで情報が変化して伝わっていったものです。情報源を辿ることは重要だと改めて感じさせられました。

この時代でしっかり正しい情報を発信しておかないと、また違った情報に脚色されてしまいそうだなと感じています。私も新しくわかったことは、Twitterなどでしっかり発信していきたいと思っています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/fbef1faba4bb058b0437c12c006c09dacbdd74a1?page=3