もし東京オリンピックが開催されなかったら? ―東京オリンピック開催の新型コロナ感染拡大への影響の推定―
結果:オリンピック閉会日の時点で、人口100万人あたりの実際に報告された感染者数(7日間平均で109.2人)は、反実仮想のそれより115.7%多い推定結果でした(反実仮想:50.6人)。オリンピック期間中の累積感染者数に関しては、実際は143,072人と、反実仮想の89,210人より61.0%多い推定結果でした(p=0.023)。反実仮想の感染者数の推移は、実際の推移より10日遅れる結果と推定されました。
考察:日本では、アスリートや関係者の外部との接触を遮断する「バブル」方式が採用されました。しかしながら、オリンピック期間中の実際の感染者数が反実仮想よりも多かった推定結果は、様々な理由でローカルな感染が増加した可能性を示唆しているかもしれません。例えば、アスリートは感染予防対策に関して一般市民の模範となる可能性がある一方で、オリンピック開催に際して、アスリートが例外的に入国できたことや、オリンピック選手の感染対策ルール違反が大きく報道されたこと等が、一般市民の感染対策遵守に影響を与えた可能性があります。他にも、緊急事態宣言下でのオリンピック開催というダブル・スタンダードの認識や、いわゆるオリンピックムードも、関係しているかもしれません。
結論:今後も新たな新興感染症が報告される可能性もあり、本研究の結果は、新型コロナあるいは将来のパンデミック下におけるメガ・イベント開催判断の議論に資する情報を提供します。
https://www.jiji.com/jc/article?k=000000024.000056667&g=prt