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その実態は謎だらけ

 しかしながら、SHEINの実態は謎に包まれている。「アメリカ発のブランド」と銘打ってはいるが、創業の地は中国・南京市。数年以内にNY証券取引所へ上場するとも噂されるものの、現時点では非上場企業であり、売上など決算情報も中国メディアの報道を通じて明らかになっているだけだ。中国専門ジャーナリストの高口康太氏が言う。

 「ファッション業界誌『WWD』が9月にSHEINに取材したところ、従業員は1万人以上、世界150の国と地域で事業を展開しており、アメリカ、シンガポール、イギリス、日本などに現地法人・拠点を置いているとのことでしたが、主要拠点は中国国内に置いているとみられます。

 創業者の許仰天(シャー・ヤンティエン)氏はウェブマーケティング企業の出身で、2008年に前身となる南京希音電子商務を創業。当初はウェディングドレスに特化した通販サイトを手掛けていました」

 SHEINの大きな強みは二つ。まず一つ目は、ネット・SNS上のファッショントレンドを超高速で取り入れる、リサーチと企画のスピード感だ。

 「SHEINは世界中のファッションサイトやInstagram、TikTokといった若年層の多いSNSを巡回・分析し、常に最先端のトレンドを追いかけながら商品企画を立てているといわれます。

 信じられないことに、企画から製造までは最短で1週間。SHEINの製造工場は中国にあるため、全世界の顧客の手元に届くまでは少しタイムラグがありますが、それでもトレンドを捉えられる驚異的なスピードです」(前出・高口氏)

ついに生まれた「中国発の本命」

 そしてもう一つの強みは、こうした「爆速」で捉えたトレンドを実際の商品に落とし込んでゆく圧倒的な製造力である。

 SHEINが製造拠点を置いているとみられる広州市は、中国でも最大の繊維工業の集積都市で、同地の業者や工場には世界中のアパレルブランドが製造を委託している。

 「中国には製造委託先の工場を探すためのネットワークがあり、どんな商品の注文が増えているかすぐに分かる。例えば『いま緑のスカートが来ている』といった注文傾向を察知したら、すぐに空いている工場に連絡して、緑のスカートを徹夜の人海戦術で大増産するといった『力業』が可能なのです」(前出・高口氏)

続く