その昔、寒さが豊かさを表わすという偏見から、「雪」が先進国の象徴とみなされる時代があった。
だから海外向けの日本の紹介写真には、決まって雪景色が登場した。それは何も雪が綺麗ということだけではなく、先進国であるというアピールだったのである。
今となっては、アラブ諸国やシンガポールなどの活躍で、そうした先入観は薄れてきたものの、雪が豊かさの象徴であるというのなら、日本は申し分のない裕福な国といえる。なぜなら、我が国は世界でもっとも雪深いからである。

その証拠に、世界一の積雪記録は滋賀県の伊吹山で作られている。1927年2月14日、雪の高さが11メートル82センチに達し、並み居るライバルの記録を抜いて世界一となった。その高さは4階建てのマンションや、鎌倉大仏の座高に相当するほどで、いまだにこの記録は破られていない。

また青森県の酸ヶ湯(すかゆ)は、混浴の大浴場で有名な標高925メートルの高地だが、ここは世界でもっとも降雪量の多い場所の一つとされている。
つまり、積もった雪の深さではなく、空から降ってきた雪の総量が多いのである。
気象史学者のクリストファー・バート氏によれば、酸ヶ湯に降る雪の量は年平均17メートルで、世界一だそうである。
それなのに積雪の最大記録は5メートル66センチと、伊吹山の半分ほどしかないのは、大雪が降る割には標高が低いために、春夏に気温が上がって雪が解けてしまうからである。

■年間降雪量世界ベスト3は日本の市町村が独占している

このように積雪、降雪共に世界一の日本だが、世界でもっとも雪深い都市もまたわが国にある。
アメリカの天気予報提供会社アキュウェザーの2016年の記事によれば、それは人口30万人の青森市で、その年間降雪量は8メートルにも達する。
2位が札幌市、3位が富山市で、アメリカでもっとも雪の多いニューヨーク州シラキュースやカナダのケベックシティですら足元にも及ばない。

このように雪の量で世界を圧倒するわが国は、雪の降る面積でも他を寄せ付けない。積雪が50センチ以上ある日が年に100日以上あって、産業の発展が停滞し、住民の生活水準の向上が阻害されている「豪雪地帯」の面積は、日本の国土全体の半分を占めている。そこには全人口の16%に相当する2000万人がたくましく暮らしている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/f13c4c1bd7634546afb34cb4574f634f75c1968d