どうして韓国の若者たちは子どもを持たなくなったのだろうか。

韓国の大学進学率は約7割にも達する。しかも、その多くがソウルにある名門大学への入学を夢見て、実際に邁進している。

親たちは子どもを名門大学に入れるため、塾の費用に惜しみなくお金を使う。韓国統計庁によると、2021年の小・中・高校生の塾費用の総額は約23兆ウォン(約2兆3千億円)に達する。

大学入学競争の次には、就職の競争が控える。韓国では大企業と中業企業の賃金格差が2倍といわれるほど格差が大きい。当然、若者たちは大企業を目指すが、韓国の場合、そのほぼ全てがソウルにある。

大学はソウルを目指す。大学への合格率が高い塾はソウルにある。大企業もソウルにある。ソウル、ソウル、ソウル。そこで何が起こるだろうか。ソウルの不動産価格は短期間では上昇と下落がみられるが、トレンドとしては上がり続けている。

厳しすぎる競争をなんとかくぐりぬけて就職できた若者たち。そして今度はマンションが手の届かない存在になってしまった。その疲労感、絶望感は察して余りあるほどだ。

以前、人口学の専門家であるソウル大学のチョ・ヨンテ教授に話を聞いた。チョ教授は「全てがソウルに集中して競争が激しい中で、若者たちは生存の危機を感じるほどだ。出産なんて考えられないというのは当然の帰結ではないでしょうか」と話していた。