安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中に銃撃され死亡した事件で、殺人容疑で送検され、刑事責任能力の有無を調べるため鑑定留置中の山上徹也容疑者(42)のもとに、全国から大量の食料品や現金などの差し入れが届けられていることが、親族への取材で分かった。

事件は8日で発生から3カ月。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)への多額献金により困窮した山上容疑者の生い立ちに同情が広がっているとみられるが、銃撃行為自体を容認するような風潮も見受けられ、専門家は「新たな犯罪を誘発する可能性がある」と警鐘を鳴らす。

山上容疑者の伯父によると、山上容疑者が鑑定留置されている大阪拘置所(大阪市都島区)には、現金書留のほか、主にオンラインで差し入れできる専門店のサービスを通じ、山上容疑者あてに食料品や衣類、書籍などの差し入れが次々と届けられている。拘置所に収容しきれないほどの量となり、菓子類を中心に段ボールで伯父宅に複数回転送されてきたという。

また、インターネットの署名サイト「Change.org」では、山上容疑者の減刑を求める署名活動も展開されており、8日までに8700を超える署名が集まっている。

このサイトでは、山上容疑者を「被害者だ」とする書き込みや「減刑どころか無罪でもいい」「好き勝手してきた不正な政治家の命は無くなっても仕方ない」などと山上容疑者の行為自体を容認するような過激なコメントも目立つ。

銃撃事件後、山上容疑者は「統一教会に恨みがあった」と供述。旧統一教会に傾倒した母親が約1億円の巨額献金を行ったことから一家が困窮状態に陥ったとされ、山上容疑者の境遇に同情が広がった。山上容疑者をモデルにした映画も、安倍氏の国葬に合わせて緊急上映されている。

こうした動きについて、立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「家族と宗教の問題があったとしても、それは自己正当化にすぎない」と指摘。「(山上容疑者を)革命のリーダーのように位置づけ追随する人が現れるかもしれず、危機感を持つべきだ」と話した。

https://www.sankei.com/article/20221008-VU7QRZQA2FNZDD2PLBILLR6XZU/