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阿部芙蓉美 『ブルーズ』インタビュー

平熱。阿部芙蓉美という人に今回のインタビューで初めて会っての印象。本文の、平凡な人が非凡ぶっている姿に「うわ!」と思った経験があるという本人の話にもあるように、彼女と彼女の音楽はスペシャルであろうとしない。力強い意思や感情を全面に出すこともしない。それなのに、大変素晴らしく心にガツンと、またはジワ〜っと響くのである。なんなんだ?この人(笑)。ありのままでなんかすごい。でも自分は平凡だと思っている、そんなインタビューし甲斐のある人のインタビュー、アルバム『ブルーズ』を聴きながらご堪能あれ。
不安っていうモノは小さい頃から抱えていて
今回Billboard JAPAN初登場ということで、ファーストフルアルバム『ブルーズ』についてはもちろんなんですが、阿部芙蓉美さんの歴史についてもお話を聞かせてください。で、まず阿部さんが音楽に目覚めたキッカケを聞かせて頂きたいんですが。
阿部芙蓉美:ごくごく普通に、物心が付いた小さい子供たちが歌う曲、みんなが同じく好きっていう感じの曲から始まって。で、歳を重ねる毎に、テレビから流れてくる普通の音楽番組で流れている曲だったり、親が持っているCDを聴いたりとか、本当に身近に流れているモノを好んで楽しく聴いてましたね。なので、「これが特に好き」とか「これがキッカケで」みたいなモノはないかな。流れてくるモノを自然と聴いていました。
幼い頃からよく歌っているような女の子でした?
阿部芙蓉美:誰に聴かせるでもなく、自分が楽しいからひとりで歌ってる。っていう感じでしたね。
そんな子が人前で歌ったり、曲を書いたり、詞を書いたりっていう方向にどうやって流れていくんでしょう?
阿部芙蓉美:曲を自分で書いて歌うということをしたのは上京してからなんですけど、それまではそういうことを自分がまさかやるとは思っていなくて。ただ単純に「音楽が好きだから、音楽関係の仕事に就きたいな」っていう漠然とした気持ちがあって上京するんですけど。で、そこでキッカケがあって、曲を書き始めて。
「プロのシンガーソングライターとして私は上京するのよ!行ってきます!」っていう感じではなかったと。
阿部芙蓉美:ではなかった。「何ができるのかな?」「どういう仕事があるのかな?」って思って上京して。もうどんな仕事があるかっていう最低限の情報すらない環境だったんで、まずその情報を得ないと何もできないぞというところで、直接東京に行って調べてみようと。
それ、かなり不安じゃないですか?
阿部芙蓉美:不安はもちろんありました。どうなるか分からないですし、今だって先のことは分からないので「どうなるのか?」っていう不安はその頃と変わらずにあるんですけど。でも他に何かできることもなくって。得意なこともなかったんで、小さいときから。なので、人間としての漠然とした不安っていうモノは小さい頃から抱えていて(笑)。で、得意なことがないんだったら好きなことを突き詰めてみようかなっていう、すごくシンプルな考えっていうか、それしかやりたいこともなかったんで、本当に無鉄砲な感じで。
飛び出してきたと。
阿部芙蓉美:そうですね。
2003年に作曲家の谷本新(タニモト アラタ)さんと出会って、デモテープの制作を開始されたそうですが、これが具体的なデビューに向けての第一歩って感じだったの?
阿部芙蓉美:まず上京して専門学校に入ったんですけど、その学校に毎週いろんな人が来て、実際にレコーディングするっていう授業があったんですよ。それでたまたま谷本さんが講師として来たんです。そのときに「曲書けないの?」って言われて、「ちょっと書いてみようかな」と。それがキッカケで一緒に曲を書いていく感じに。そのときに声とかを褒めてもらったんです。あまり褒められることがそれまでの人生の中でなかったので、純粋に嬉しくて。それで「いろいろやってみたいな」っていう気持ちになって。
で、その谷本さんと出会ってからシングル『群青』でメジャーデビューを果たすまでに4年ぐらいの時間を費やしていますが、その間にはどんな活動を?
阿部芙蓉美:ほとんど曲作りなんですけど、「これからどうすればいいのかなぁ?」みたいな調子でやっていたっていうのも正直なところあって。でもだんだん曲を書き進めていくうちに「これはもっとちゃんと書いて、やっていった方が良い」っていう気持ちになり、それで徐々に人前で歌うっていうことも始めて。ちょっとした武者修行的な感じで(笑)。なので、本当に少しずつでした。いきなり大がかりなことをやろうと言っても、それは無茶であることは分かっていたんで、本当に少しずつ進めてていた感じです。
デビューでも、アルバムを完成させることでもいいんですけど、どの辺でいわゆるひとつの到達点を見るようになった