米でアマゾンを抜きトップに…謎のECアパレル「シーイン」の正体

10/22(土) 7:37配信FRIDAY

◆アパレル業界人もその存在に気付かなかった「SHEIN(シーイン)」

ここ10年、世界的に急成長したアパレル企業は生まれず、同じような顔ぶれで拡大競争が繰り広げられてきたわけですが、コロナ禍が始まった2020年から突如として急成長ブランドが現れ、注目を集め始めました。それが「SHEIN(シーイン)」です。

アメリカでは昨年5月に最もダウンロードされたECアプリとしてAmazonを抜きトップになり、日本国内でも2021年ごろから盛んに経済系メディアやアパレル業界メディアで報じられるようになりました。これは、自分が知る限りにおいては、中国メディアによって5兆円規模の巨額の資金調達があったことが報じられたのを受けてのことです。それまでは国内のアパレル業界人、業界メディア人でも自分も含めてその存在すら知りませんでした。

◆「SHEIN」とは…

この媒体は業界メディアでも経済メディアでもないので、SHEINなど聞いたこともないという読者もたくさんおられるでしょうから、SHEINというブランドについてかなり大雑把にまとめておきます。

SHEINは2008年に中国で設立されたとされるブランドで、実店舗を持たずインターネットのみで衣料品を販売しています。我が国も含めた世界中の国に向けて販売していますが中国国内には販売していないとされています。2008年に創業され、当初はウェディング事業など、現在とは異なる事業を手掛けていたとされます。しかし上手く行かず事業転換を重ねた後、SNS経由の「アパレル直販事業」にシフトし、2015年にSHEINを立ち上げ、現在の事業となったといわれています。

すべて伝聞調で書いているのは、SHEINという会社は何一つとして公表されているものがないためです。また創業者のインタビュー記事どころか顔写真すら出回っていない謎のブランドなのです。

◆リブランディングからわずか7年間で「ユニクロ超え」

そして、ついに2022年秋には世界売上高が2兆8000億円に達したともいわれており、ユニクロを展開するファーストリテイリングの22年8月期連結の売上高が2兆3011億円だったため、我が国のメディアは今秋こぞって「ユニクロ超え」という見出しで記事を掲載することとなりました。

ただ、この2兆8000億円という売上高も公式に発表されたものではありませんので、伝聞という形にならざるを得ないのですが、2015年のリブランディングからわずか7年間で到達したことが事実だとしたら驚異的な成長速度だと言わねばなりません。それゆえに国内の経済メディア、業界メディアからも注目が集まっているというわけです。

◆TikTokなど若者世代向けのSNSを中心にステルス的に急成長

SHEINの特徴は圧倒的な低価格にあります。それとトレンド商品を企画してから投入するまでの速さです。一口に低価格と言っても様々なレベルがあるのですが、ジーユーと同等か少し安いくらいでしょうか。さらに言うなら、値引き品は激安になります。価格はジーユー並みでトレンド商品の投入速度はZARA並みというのが最も一般の方々にもわかりやすい比喩なのではないかと思います。

一説には、デザイン作成から商品投入まで3日間しかかからないという報道もあります(これも事実かどうか不明)が、通常の洋服作りだと、デザインしてからパターン(型紙)作り、それに基づいたサンプル製作、サンプルの修正を経て量産に入るので、3日間で完了することは考えられません。しかし、他社ブランド製品のいくつかをそのまま盗用しているとしたら不可能ではないでしょう。圧倒的な規模成長が取りざたされるSHEINですが、著作権の違反で訴えられることも増えています。

SHEINが2020年まであまり注目されないままに急速にブランド規模を拡大できたことはこれまでのファッションブランドと異なり、ほとんどの販促・告知をTikTokやインスタグラムをはじめとする若者世代が好むSNSのみに集中していたことが理由だと考えられています。例えば、オジサン・オバサン世代が愛用しているフェイスブックにはSHEINの告知や広告はほとんど登場しません。またこれまでの国内衣料品ブランドと異なり、ファッション雑誌にも掲載されませんでしたし、テレビコマーシャルもほとんど流れていませんでした。このため、ステルス的に主に国内外の若者の間に広がっていったのです。SHEINの急成長の源泉は日本国内での売れ行きよりもアメリカでの売れ行きが主でしょう。

https://news.yahoo.co.jp/articles/a5a2731ae6efb60c05b0f5ac3a495f211d480342