かつて「南京虫」と呼ばれ、戦後の日本ではびこっていた害虫トコジラミ。一度は国内で途絶えた被害が、2000年代からじわじわと増えている。
夜寝ている間に血を吸われ、腕や足など数十カ所に赤いかみ痕ができ、激しいかゆみに襲われる-。

一度は日本国内から姿を消したとされるが、近年再び被害が増えている 日本ペストコントロール協会が把握する相談件数は、09年から10年間で5倍以上に増加。インバウンドや旅行で海外との往来が増えたことで、国内に流入しているとみられる。
記者も今夏、神戸市内の自宅マンションで被害に見舞われ、完全駆除に向けて闘いを繰り広げた。

■帰ってきたトコジラミ
名前に「シラミ」がつくが、トコジラミはカメムシ科。丸く平らな体で、体長は5~7ミリほど。卵からふ化して1カ月ほどで成虫になり、雌は1日5、6個、生涯で数百個の卵を産むとされる。すさまじい繁殖力だ。
夜行性で人や動物の血を吸い、日中は寝室周辺の壁や家具、寝具の隙間に潜んでいる。
戦後の日本でまん延し、南京虫の名前でうとまれていたが、有機塩素系殺虫剤DDTの使用などのおかげで姿を消した。だが2000年代に入り、業者への被害相談が徐々に増え始めた。
兵庫県尼崎市の害虫駆除業者「トーメー」は、「海外旅行やインバウンドの増加が影響しているのではないか」と指摘する。
海外では市販の殺虫剤が効かない「スーパートコジラミ」が多く生息する地域があるため、それらがすみ着く部屋に泊まった旅行者が、荷物や服に紛れ込んだことを気付かずに持ち帰り、自宅で繁殖させてしまうケースが多いという。
同社では毎年7~10月ごろ、トコジラミに関する相談が相次ぐ。だが20、21年はやや減ったといい、「コロナ禍で海外との行き来が減ったからでは」とみている。

■ダニかと思えば…

記者が初めて被害を確認したのは5月末。夫の首元に1円玉サイズの赤い斑点ができたと思っていると、数日のうちに腕や足など十数カ所に広がった。激しいかゆみを覚えて皮膚科を受診すると、「ダニではないか」と診断された。
記者自身も手足のあちこちに斑点が生じ、がまんできないかゆみに襲われた。 寝室にしている和室にダニ用殺虫スプレーを大量散布したものの、全く効果なし。日を追うごとにかみ痕は増えていく。
そしてある日、体長1センチ弱、赤褐色の丸い虫がふすまを歩いているのを発見。その特徴やかゆみの症状をネットで検索した結果、トコジラミにたどり着いた。
すぐにドラッグストアで、駆除対象にトコジラミを明記している殺虫剤を購入。畳の裏や押し入れの隅など虫が隠れそうな隙間にくまなくスプレーを噴射し、くん煙式の殺虫剤も仕掛けた。だが翌日、押し入れの隙間を歩く虫たちを見つけ、無力感にさいなまれた。


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https://news.yahoo.co.jp/articles/8124acfa6e7f0bb59ca42f620f4caf3c366dd49e