中国共産党の新指導部を見て感じたのは、「習近平総書記の大勝利」ということに尽きる。共産主義青年団(共青団)派など信頼していないグループを排除する傾向は5年前から見られたものだが、今回は「ここまでやるか」というほど徹底的に排除し、地方時代に共に働いた子飼いたちで固めている。

最高指導部のサプライズとなったのは北京市トップの蔡奇氏だが、実は彼も地方時代の部下だ。5年前に中央委員を飛び越えて首都のトップにつけ、政治局入りさせた。「最も安心できる部下」として相当な信頼を置いている証拠だ。

最近、習氏に媚(こび)を売っていた共青団の胡春華副首相を降格させたところを見ると、「地方時代の部下」や「親同士が戦友」という類いの人間しか信頼しないとの習氏の考え方が改めて浮き彫りになったといえるだろう。

習氏は1期目に反腐敗闘争で敵対派閥をつぶし、2期目でルールを自身に有利に変えた。3期目では党規約に習氏の地位と思想を確立する「二つの確立」を盛り込み、党員を縛り付けるつもりだ。今後は習氏に文句を言えば、それは反党行為となる。

江沢民、胡錦濤時代の指導部内にはさまざまな意見の人がいた。鄧小平、そして毛沢東時代でさえも異論を唱えるような人物がいたが、今回の人事を見ると習氏に対抗できる人物も見当たらず、後継者らしき人物もいない。事実上、毛氏に匹敵する地位を得たといえるのではないか。

習氏は党幹部だった父親らが血を流すような思いで新中国を建国したという考えが染みついている。そして自分たちは共青団のような末端からのたたき上げではなく、「革命家の血筋」だという意識もある。それに加え、父親の失脚や自身の「下放」経験から、少しでも気を抜けば地位を失ってしまう権力闘争の怖さを誰よりも知っている。

だからこそ、習氏は絶対的な地位にこだわっている。彼は2049年の建国100年までに中国を世界トップにすると宣言している。米国を超える強国にするため、習氏は3期目にとどまらず、4期でも5期でも続けるつもりだろう。(聞き手 桑村朋)

地位は事実上毛沢東に匹敵か 神田外語大教授・興梠一郎氏
https://news.yahoo.co.jp/articles/22ff0dfc430aa5daf9e1719d253c63ddb5b132b0