https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220620/k10013679951000.html

“同性婚 認められないのは憲法に違反せず” 大阪地裁

同性どうしの結婚が認められていないのは憲法に違反するとして同性のカップルが国に賠償を求めた裁判で、大阪地方裁判所は憲法には違反しないと判断して訴えを退けました。

同様の裁判では去年、札幌地方裁判所が憲法違反とする判決を言い渡していて同性婚をめぐる司法判断が分かれた形です。

京都府や香川県などに住む男性どうしと女性どうしの3組の同性カップルの6人は、民法や戸籍法の規定が同性どうしの結婚を認めていないのは、憲法に違反するとして、国に賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に起こしていました。
20日の判決で、大阪地方裁判所の土井文美裁判長は「婚姻の自由を定めた憲法24条は、男女の間での結婚を想定したもので同性間を含むものではない」として、法律の規定は憲法に違反しないと判断しました。

また、法の下の平等を定めた憲法14条との関係でも「異性間の結婚は、男女が子を産み育てる関係を社会が保護するという目的で定着した制度だが、同性間の関係性にどのような保護を与えるかは議論の過程にある」として、違反しないと判断し、訴えを退けました。

全国5か所で起こされている同様の集団訴訟のうち去年3月に札幌地方裁判所が言い渡した最初の判決は憲法に違反するという判断を示していて、同性婚をめぐる司法判断が分かれた形です。
大阪地裁の判決のポイントは
大阪地裁の判決のポイントをまとめました。
●憲法14条・法の下の平等「同性間の法的保護 まだ議論の過程」
憲法14条は「すべての国民は法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分、または門地によって、政治的、経済的、または社会的関係において差別されない」として、法の下の平等を定めています。

判決では「男女が子を産み育てる関係は、歴史的、伝統的に定着した制度であるのに対し、同性間の関係は、どのような法的保護を与えるかはまだ議論の過程だ」などと指摘し、憲法14条に違反するとは認められないと判断しました。

去年3月の札幌地裁の判決では、「異性カップルには、婚姻の制度を利用する機会を提供しているにもかかわらず、同性カップルに対しては婚姻による法的利益の一部すらも受けられないようにしていることは、合理的な根拠を欠いた差別的な扱いで、憲法に違反すると認められる」と指摘していて、司法判断が分かれる形となりました。
●憲法24条・婚姻の自由「異性間の婚姻のみを指す」
また、憲法24条は「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」として婚姻の自由を保障しています。

これについて判決は、「婚姻は男女から成ることを想定したもので、異性間の婚姻のみを指し、同性間の婚姻を含むものではない」として、札幌地裁と同様に憲法24条には違反しないと判断しました。
●社会状況によっては、将来的に憲法違反になりうると言及
一方で、今回の判決では、「婚姻が当事者間の自由な合意で結ばれ、誰と婚姻するかの選択は個人の自己実現そのもので、同性愛者にも婚姻に準ずる制度を構築することは禁止されていない。同性間にも、相続や財産分与等の経済的利益だけでなく、カップルとして公認される人格的利益は認められる」と指摘しました。

そのうえで「どのような制度が適切であるかは、国の伝統や国民感情、時代ごとの夫婦や親子関係などを踏まえ民主的に決められるべきだ」として、今後の社会状況の変化によっては、同性婚を認める立法措置をとらない場合は、将来的に憲法違反になりうると言及しました。
香川県の原告「司法で判断することから逃げた」
原告の香川県三豊市に住む田中昭全さん(44)と川田有希さん(37)は、この先も不安なく2人で暮らしていくために夫婦なら当たり前の権利を認めてほしいと訴えてきました。