徳川家康など静岡ゆかりの武将らが描かれ、歴史愛好家の間でひそかに人気のイラストシール「激闘戦国伝 ~熱血!家康物語 前編~」が、インターネット上で高額で取引されている。毎日新聞が複数のサイトで確認した。シールは県外から新たな観光客を呼び込もうと企画されたもので、関係者は「(転売は)歓迎できないが、止める手立てがない」と頭を抱えている。

激闘戦国伝は、戦国武将や姫君たちを題材にしたシール(約5センチ四方)で、全33種類あり、1枚550円。1980年代に人気を博したチョコレート菓子「ビックリマン」のおまけシール風のイラストが描かれている。2023年のNHK大河ドラマ「どうする家康」の放送を見据え、静岡市の公益財団法人・するが企画観光局が企画した。

10月8日から富士山静岡空港や東急ハンズ静岡店など県内10カ所で販売している。イラストを手がけたデザイン会社「フィジオ」(東京都豊島区)によると、発売から1週間で約2000枚を売り上げた。初回生産分(数量非公表)が売り切れれば、販売を終了する予定。
 
毎日新聞の調べで出品が確認されたのは、ネットオークション大手の「ヤフーオークション(ヤフオク)」やフリーマーケットアプリ「メルカリ」。ヤフオクでは「井伊直虎」のシールに9500円、「松平元康(家康の旧名)」に8000円の値がつけられていた。メルカリでは「今川義元」など、高いシールは3000~4000円で販売されていた。

スポーツやコンサートのチケット、偽ブランド品などの転売は法的に規制されているが、ご当地グッズを含む大半の物品は規制対象にはならないとみられる。実際に、他にも人気キャラクターのご当地グッズがさまざまなサイトで取引されている。

観光局の担当者は転売について「止められる立場にない」としつつ、「家康ゆかりの地を訪れるきっかけになればとの思いで作った。できれば静岡で買ってほしい」と複雑な思いを明かした。

北海道大大学院の岡本亮輔教授(観光学)は「ご当地グッズは転売されても地元の利益にならない。観光振興を妨げているので倫理的には問題がある」と指摘。その上で「グッズはあくまでも現地を訪れてもらうきっかけ。(販売者は)数量や期間を限定した販売をやめて、いつでも購入できるようにするなど、本来の目的が見失われないような工夫が必要だ」と話した。【深野麟之介、最上和喜】

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