スコッティがエリエールを訴えた 水に流せない業界の「長巻き」事情
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「スコッティ」で知られる日本製紙子会社の日本製紙クレシアが、「エリエール」が主力の大王製紙を特許侵害で訴えている。2016年4月に売り出したトイレットペーパーの「3倍巻き」に関する技術を、今年4月発売の大王製紙の「3・2倍巻き」にまねされたと主張。製造・販売の中止、3300万円の損害賠償などを求めた。トラブルを水に流せなかった業界の事情とは……。

 紙の長さが従来(紙が二重のダブルで約25メートル、シングルは約50メートル)の1・5倍以上あるトイレットペーパーは、業界で「長巻き」「長尺」と呼ばれる。一般的なホルダーに収まるよう、日本産業規格(JIS)でロールは直径12センチ以下、芯部分は誤差±1ミリの直径3・8センチという基準がある一方、紙を薄くしたり、きつく巻いたりすれば顧客が好む紙の柔らかさ、ふんわり感が失われるというジレンマの克服が要求される。

 日本製紙クレシアは10年ほど前から3倍巻きの開発を始め、関連の特許を50件以上取ったという。9月に起こした訴訟では、このうち紙質や表面の凹凸の大きさ、包装といった3件が侵害されたと訴えている。

 これに対し、大王製紙は「常に他社の知的財産権を侵害しないよう留意の上ビジネスを行っており、本件においても侵害の理由はない」と反論する文書を公表。1997年に「1・5倍巻き」、14年に「2倍巻き」を売り出してきた実績があるともする。

 東京地裁で10月26日にあった第1回口頭弁論では、互いに争う姿勢を示した。どちらも譲らない背景には長巻きが持つ魅力がある。