稲垣吾郎の生涯ベスト映画、最近感銘を受けた作品は?【あの人が見た名作・傑作】

――稲垣さんにとって、生涯のベスト映画を教えてください。

稲垣:過去にも同じ作品を挙げていますが、それでもいいですか? 結局、初めて受けた衝撃が一番になってしまうんですよね。
僕にとっては、レオス・カラックス監督の「ボーイ・ミーツ・ガール」「汚れた血」「ポンヌフの恋人」という、アレックス3部作と形容される3作品です。
もともと大道芸人だったドニ・ラバンがカラックスに見出され、“アレックス”という役を演じ続ける3部作なのですが、衝撃でした。ああいう映画は観た事がなかったですから。
18~19歳くらいの頃、渋谷のパルコ前にあったシネマライズで「ポンヌフの恋人」の公開を記念して上映された「汚れた血」を観たんです。
カラックスはゴダールの再来と言われていたのですが、当時の僕はゴダールすら知らないわけです。それまではハリウッドの王道的な作品ばかり観て来ていたので、その衝撃たるや尚更ですよね。
「汚れた血」の終盤、ドニ・ラバンがジュリー・デルピーとバイクで疾走する光景がずっと残っているんです。理由なんて必要ないですよね。
あと、ドニ・ラバン演じるアレックスが、デビッド・ボウイの「モダン・ラヴ」という楽曲をバックに夜の街を走るシーンも印象的。100メートルくらいレールを敷いて、並走しながら撮ったらしいんですが、若者の疾走を表現していて見事でした。
僕にとって、ボウイを知るきっかけになったのも、「汚れた血」。ボウイの楽曲は「ヒーローズ」などは他の映画でも使われていますが、あえて「モダン・ラヴ」をピックアップしたところにグッときたんでしょうね。
あれは、もはや“未知との遭遇”と言って良いのではないでしょうか。ビートルズを初めて聞いた人がそうだっていうじゃないですか。良いとか悪いとかじゃなくて、“未知との遭遇”を身を持って体感してしまったという。今でも、時おり観返したりしますからね。

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