(ソースより抜粋)
近年、大手チェーン店を中心に飲食業界で配膳の自動化が進んでいる。

回転寿司業界では高速レーンに寿司を乗せて客に届けるのは当たり前となっており、ファミレス業界でも配膳ロボットに料理を運ばせる店舗が多くなってきている。

こうしてオペレーションの一部を自動化させることによって、人件費などのコストを減らす狙いがあるのだろう。

ただ余剰人員を削減した結果、別の問題が発生しているのをご存じだろうか。

その代表的な例が、店内衛生環境の悪化だ。なかでも、8月28日にTwitterへ投稿されたツイートが興味深い内容となっている。

≪100円寿司とか安いチェーン店、自動化自動化で人すごく減らしていってるけど、余剰人員を極限まで減らした結果、ちょっとしたテーブルの下の汚れとか確実に細かいところに影響は出てきてて、店員さんもそれを気にする様子もない。日本なんて人件費安いのにそれでも人減らしをやって≫

≪安く提供しないと、貧困化した日本人は店に来てくれない。店がどんどん汚くなって、それを客は許容しなければならず、そのうちそれが当たり前の光景になる、それがどんどん進むのが国の貧困化なのかな。≫

このツイートには、10月17日の時点で2万以上の“いいね”、200件を超えるコメントが寄せられており大きな話題を呼んでいだ。

フードジャーナリストの重盛高雄氏に、飲食業界の配膳自動化の現状とそれに伴って発生している問題点について詳しく解説してもらった。

「大手ファミレスチェーン店では、配膳用の自動ロボットを運用していますね。そして最近では配膳だけではなく、
お客の食べ終わった皿をロボットに乗せて厨房まで運ぶという動線を、オペレーションとして取り入れているお店も出てきています。

人手不足が原因ですね。基本的に飲食業界は長続きしない人が多く、一般事務に比べると身体に負担のかかる仕事なのですぐに人手がいなくなってしまうんです」

「近年の飲食業界は、客単価が上がらず経営に悩んでいるところが多い印象です。
コロナ禍になってからはより顕著になり、店側は何とか回転率を上げて客数を増やし、売上をアップさせようとしています。
だがそうなると当然、一席あたりの準備にかけられる時間は短くなってしまう。チェーン店なら“○分以内に掃除をしてお客を案内する”といったマニュアルがあるでしょうから、
次のお客を入れようとする過程で掃除漏れが出てきてしまうのかもしれません」

飲食業界が不衛生になりつつある背景には、業界の構造の影響も大きいということだろう。

重盛氏いわく経営的な観点から見ると、近年の飲食業界では客を呼び込むことが最優先になってきており、どのように満足度高めるかという視点が欠けているという。

「よほどのオーナー企業ではない限り、大手の飲食チェーン店では、上層部は常に流動します。
そうなると自分が役職に就いているときだけ、数字を上げればいいという思考に陥りやすいんです。
そのため、本当にお客の幸せを考えているかどうか、どうしても疑問を抱いてしまいます。
人手を減らせば固定費はどんどん削減できて、目先の利益は上がって一見いいことづくめに思えるかもしれませんが、それによって失われるものもあるはずです」

貧困化が進んでいると言われる日本。このままでは“高級店はきれい”、“安いチェーン店は汚い”という二極化が進んでいきそうだ。

「その可能性は十分あるでしょう。今後はリーズナブルな価格のチェーン店では、これまでのような清潔さを期待できなくなるのかもしれません。
ですが、やはりお客が納得できるレベルの衛生環境は保ってほしいものです。

もちろん客単価が3万円のお店と1000円のお店で求められる清潔感は異なるので、すべてのお店に同程度を要求するのは筋違いでしょうが、
最低限ごはんを食べていて美味しいと感じられるレベルの衛生環境づくりは大事です。
コストカットを言い訳に“汚くてもOK”という方向に進んでしまうのは、飲食店としては好ましい態度とは言えないですね」