「消費税10%は間違いだった」安倍元首相がアベノミクスの指南役に告げた"増税の後悔"
安倍元首相が闘っていた増税派の正体とは

プレジデント 2022年11月18日号2022/11/04 10:00

■安倍元首相は増税派と闘っていた

第2次安倍政権は14年に5%から8%へ、そして19年に8%から10%へ、2回にわたって消費税を増税している。10%への引き上げは民主党政権時に決まっており、安倍政権では解散総選挙に打って出て、これを2度先送りした。

しかし、財源を欲する省庁の要求は強力で、3度目の先送りはできなかった。財務省だけでなくすべての省庁が消費増税を求めていたし、閣僚や与党議員あるいは有力な経済学者も、あと一歩のところまで迫ったプライマリー・バランスの黒字化を達成すべきとの論陣を張った。20年度までのプライマリー・バランス黒字化が、10年に開催されたトロント・サミットでの国際公約だったことも、こうした論調を後押しした。

もちろん、安倍元首相にも財政赤字は少ないに越したことはないという思いはあったろうし、ここまで経済回復が順調に進めば大丈夫だろうという楽観もあったと思う。かくして、19年10月に消費税は予定通り10%に引き上げられたわけであるが、悪いことにその翌々月に中国武漢で新型コロナウイルスの感染例が報告され、翌年1月には日本でも最初の感染者が確認された。その後の展開は、まだ皆さんの記憶にも新しいだろう。

第2次政権を退陣された後の「正論」での対談では、安倍元首相は16年以降に大胆な財政政策に振り切らなかったこと、19年に消費増税の決断をしたことを後悔しておられた。それは私も同じで、内閣官房参与として、もっと強く進言すべきだったと反省している。私もリカード理論の束縛から逃れることが遅すぎたのである。

https://president.jp/articles/-/63006