菓子業界の消費者対応を行う「日本菓子BB協会」は2017年、菓子の現物がなければかわりの商品を送らないという共通ルールを決めた。
カルビーでお客様相談室長を務めた経験もある、日本菓子BB協会のアドバイザー・天野泰守さんに
悪質クレームの実態や取り組みを聞いた。

●「顧客創造」のため、多量の菓子を送る慣習がエスカレート

――業界の共通ルールを決める前は、悪質クレームにどう対応していたのでしょうか。

クレームがあった商品のお詫びとして、たくさんの商品の詰め合わせを渡す慣行がありました。

工業製品と違い、お菓子は焼いたり揚げたりする過程でどうしても形にばらつきが出ます。
お客さまの主観による「欠けている」とか「味が合わない」などの要望を全部受け入れてしまっていたんです。

本来なら現物を送ってもらって原因究明・再発防止策を行うべきなのに、現物がなくても商品を送っていました。
「たくさんの商品をあげればお客さまが喜ぶ」とか、「顧客創造のため」という理由をつけてエスカレートしていったのです。

――長く続いた慣習を変えたきっかけは何だったのですか。

カルビーから日本菓子BB協会に出向した2015年、あることに気付いたからです。
菓子業界は業界全体の売上高の約8割を大手30社ほどで占めています。
が、中小企業もたくさんあります。中小の菓子メーカーが大手の過剰なクレーム対応で大変な思いをしていました。

中小企業には営業マンが全国に3、4人ほどの会社もあります。
大手がやっているような対応はとてもできません。
大手がクレームに過剰対応することで「あの会社ではこれぐらいやってくれたのに、おたくはやってくれないのか」と言われていたのです。
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