「ゴッホ名画にスープ投げ」を理解せぬ日本の欠点 かなり根が深い「想像力欠乏」状態の蔓延
斎藤 幸平 :東京大学大学院准教授

実は、SNS上で今回の事件の張本人が語っているように、彼女らはすでにデモも、署名も、政治家への嘆願も、何年間も地道に行ってきた。
けれども、二酸化炭素の排出量は減っていない。今後、もし各国が現在掲げる温室効果ガス排出削減目標が達成できたとしても、
今世紀末までの気温上昇は2.6度になるという。
これは、科学者たちが警告する1.5度という数字を大きく上回ってしまう(そして目標が達成される保証ももちろんない)。

要するに、今までのやり方では、まったくもって不十分なのだ。
にもかかわらず、私たちの大半は気候危機について気にせずに普段どおりの暮らしをしている。
みんなが、もっと真剣に、この危機にどう対処すべきかを考えなければならないのに。
そんな状況での苦肉の策が今回の行為というわけだ。もちろん、作品本体に傷がつかないことは知っていたという。

若者たちの問いはこうだ。

地球と「ひまわり」、どちらが美しいのか。

そんなもの比べる対象でないといいたくなるかもしれない。
だが、この広大な宇宙で唯一、これほど多くの生命体が存在している地球のほうが美しいと、
ジャスト・ストップ・オイルの若者は考える。
その地球を守るべきときになにもせず、資本主義社会はたった1枚の絵画に120億円という
何人もの命や環境改善をできるバカみたいな価格をつけて、崇めている。
https://toyokeizai.net/articles/-/631285