「大学の知人の間でもメンズブラ着ける子は増えてきてますね。仲良い男友達グループだとブラの見せ合いとかもします(笑)」
そう語るのは令和の若者、もとい令和男子である谷口さん(仮)。本記事では令和男子の間でじわりと増えつつある「ブラジャー男子」をフィーチャーしていく。


2021年春。私はあるインターネット記事を見て目を疑った。そこに書いてあったのはシンプルな複合語、「メンズブラジャー」だった。「メンズ」と「ブラジャー」。矛盾する2つの言葉が自然に複合化されているなんてどういうことなんだ、と困惑しながらも、自分の中で生まれるメンズブラに対する好奇心を抑えることができなかった。
私はすぐさま動いた。アンケート業者に依頼し、「メンズブラを付けたことがあるか?」というアンケートをとった。すると、約13%の男性がブラジャー経験者だったことがわかった。想像よりも遥かに高いメンズブラ経験率に圧倒された私は、メンズブラ当事者の声が聞きたくなり、アンケート回答者の中で、メンズブラ経験者にアポイントメントを取ろうと試みた。
そこでアポを快諾してくれたのが冒頭の谷口さんだ。
谷口さんは平成10年生まれ、24歳のれっきとした令和男子だ。北海道別海町に生まれ、父の転職を機に3歳の頃から岩手県釜石市で育ち、現在は大阪大学で生体工学の研究をしているという。趣味はサウナとジャニーズ鑑賞、見た目も地味めでお世辞にも女性的とは言えず、スペックと容姿だけ見ればどこにでもいる普通の大学院生といった印象を受ける。
そんな‘普通’な谷口さんに、メンズブラを付けることになった経緯を聞いてみた。
「最初はちょっとした好奇心で。6年くらい前かな、メンズメイクって流行ったじゃないですか。それの延長線上でちょっとメンズブラ付けてみるか、みたいな。そしたら案外ハマっちゃって。ブラジャーを着ける背徳感とか、女性になりきれる安心感とかがフィットしたんでしょうね。」
恥じらいもなくあっけらかんとメンズブラについて話す谷口さんはまさに令和男子と言うべきであろうか。平成男子の私なら口が裂けてもブラジャーを着用していることなど人に話せないであろう。
谷口さんは続けてこう語った。
「もう僕にとってはブラジャーはマストアイテムですね。パンティーを履くのと同じで、着けてないと強い違和感を覚えます。就活で不利だとわかっていても僕はブラジャーを着けて面接を受けました。たとえ肉親の葬式であろうと、ブラジャーは着けます。それが僕にとっての‘普通’ですから。」
谷口さんのブラジャーに対する覚悟は強い。谷口さんは男性のブラジャー着用を広めるべく、大学の知人などにもメンズブラを‘布教’しているという。
「メンズブラってほんといいものだからみんなに広めたくなっちゃうんですよね、自分だけ着けてるだけじゃ勿体無いし。一般教養の授業で隣になった男の子に、突然自分が着けてるメンズブラを見せつけたりとかしましたね(笑)
甲斐あってか大学の知人の間でもメンズブラ着ける子は増えてきてますね。仲良くしてる男友達グループだとブラジャーの見せ合いっこしてキャッキャ言い合ったりもします。この前はパジャマパーティーならぬ、‘メンズブラパーティー’を僕の下宿でやりました。盛り上がりましたね。」
谷口さんの話を聞く限り、メンズブラは本当に定着しつつあるようだ。令和男子のリベラリズムを体感した私は、最後にメンズブラ着用における弊害などはあるか尋ねてみた。
「さっきも話した仲良くしてる男友達グループだと、メンズブラが定着しすぎてて。たまに集まりにノーブラで来る子とかいると、総Disされてますね。1日中無視されたりとかもあったり。それはちょっと可哀想だなって思うんですけど、仲間はずれにされないように僕もDisに参加しちゃったりして…
こういうシチュエーションでちょっと罪悪感を覚えちゃうのがメンズブラ時代の欠点かなとは思いますね。寛容な時代は人々を不寛容にさせるってまさにこのことだなとひしひしと感じます。」

令和男子のニュースタンダード、「メンズブラ」。今後も若者の着用率は増加する一方と予想される。平成男子や昭和男子の読者も、令和男子についていくために、一度ブラジャーを着けてみてはいかがだろうか。

(筆者:エビリファイ松山)

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