https://mainichi.jp/articles/20221114/k00/00m/030/014000c

ウクライナ侵攻への参加が指摘されるロシアの民間軍事会社「ワグネル」の傭兵(ようへい)だったロシア人男性が
「裏切り者」として殺害される様子という動画がインターネット上で出回っている。ロシアの在外・独立系メディア「メドゥーザ」などが13日、報じた。
ウクライナ軍の反転攻勢でロシア側が守勢に回る中、私刑による組織内部や世論の引き締めといった狙いがあるとみられる。

 この動画は、ワグネルと関係が深いとされるニュースサイト「グレーゾーン」が12日、通信アプリ「テレグラム」で「報復のハンマー」と題して公開した。
頭部をハンマーで殴打されて殺されたとみられるこの男性は、「エブゲニー・ヌージン」と自ら名乗っている。
55歳というヌージン氏は、殺人罪で24年の禁錮刑判決を受けて露西部リャザン州の刑務所で服役中、
この夏にワグネル創設者である新興実業家のプリゴジン氏の勧誘に応じて傭兵になったという。

 ヌージン氏は戦闘参加後に投降し、今年9月にはウクライナ・メディアの取材に「ウクライナ側で戦う」「ウクライナには親族がいる」と語っていた。

 ヌージン氏がどのようにしてロシア側へ連れ戻されたかは不明だが、動画内では9月にウクライナ側へ寝返ったことや、
10月半ばに首都キーウ(キエフ)で拉致されたことなどを独白している。約1分20秒の動画の終盤、ヌージン氏は頭部をハンマーで2回殴打されており、死亡した模様だ。

 ロイター通信の取材に対し、プリゴジン氏は「この動画は『犬は犬死にする』と題されるべきだ。彼(ヌージン氏)は、不親切だが公正な人々と遭遇した」と語り、
殺害へのワグネルの関与を示唆。法的手続きを経ずに一方的な私刑で死亡させる行為を「公正」と正当化した。

 米シンクタンク「戦争研究所」は、ウクライナ侵攻を継続するために、プーチン政権が正規軍だけではなく
ワグネルなどの私兵組織の兵力にも頼る必要が生じていると分析。
英国防省は7月、多数の戦死者による要員不足を補うためにワグネルが最前線での戦闘に受刑者を投入しているとの分析を公表している。
これまでにプリゴジン氏が露国内の刑務所を訪れる様子の動画も流出している。