猫も飼い主の声を聞き分けて「反応している」

猫は話しかけても犬ほど反応しない、ツンケンしていると言われることが多いが、新たな研究で、「飼い主が思っている以上に、猫は飼い主のことを気にかけている」可能性が示された。

学術誌「アニマル・コグニション」が先月掲載したフランスの研究グループの調査によると、「猫はやや甲高い声に反応するだけでなく、それが誰の声なのかも聞き分けている」という。

「他の誰かが甲高い声で話しかけるときよりも、飼い主が甲高い声で話しかけたほうが反応している」

別のアメリカの研究者で、動物の健康と行動を専門とするクリスティン・ヴィターレは、「猫は、飼い主が何を言っているのかだけでなく、どのように言っているのかに至るまで注意を払っている」と、米紙「ニューヨーク・タイムズ」に述べている。

ヴィターレによれば、猫も飼い主への愛着があり、「その愛着の習性は、もともとは母親との交流のために築かれるものに酷似している。愛着の対象が、母親から世話をしてくれる飼い主(人間)へと置き換えられた可能性がある」という。

また、犬とは異なり、「ほとんどの猫は、食べ物やおもちゃなどの報酬よりも、人間との相互作用を好む」。

猫の行動の研究は犬よりも難しいと、ニューヨーク・タイムズは書く。

「猫は実験室にいることでストレスを感じ、意味のある行動観察ができなくなることがよくある」という。さらに、脳機能を研究するために、犬のようにMRI(磁気共鳴画像装置)による検査に耐えられるよう訓練を行うことも不可能だ。

そのため、人間は犬ほど「猫のことをあまり理解していない」。

猫がよそよそしいわけではない
犬は訓練をすることで、人間の指令に忠実に行動できる能力を持っている。

それが「犬のほうが(猫より)人懐っこくて、信頼できる」といった「固定概念につながっている。だが、実際には犬が何を考えているのかはわからない」と、フランスの犬の行動の研究者であるサラ・ジャンナンは、同紙に述べている。

「犬が私たちを人間を愛しているというのは、人間の単なる主観的な思いに基づくところが大きいです」

前述のフランスの研究チームは、調査対象の各猫の家を訪ね、録音した人間のさまざまな声を猫に聞かせて反応をみたと、同紙に述べている。

その結果、他の誰よりも「飼い主が甲高い声で話しかけた時に一番反応していた」ことがわかったが、ただ「その反応は非常にさりげないもの」で、「耳を動かしたり、声のする方に頭を動かしたり、それまで行っていた動きを一瞬止めてみたりする」程度だという。

猫の反応が犬に比べて薄いからといって、「猫がよそよそしいわけではない。猫を呼んでも来ないときには、何か他のことに気を取られているか、単に休息している可能性がある」。

犬は呼ぶとすぐにやってくるので、飼い主のことが好きで関心があるからだといった期待を人は持ちがちだ。

けれど、自身に置き換えて考えてみて欲しいと、同紙は指摘する。

「仮に家族の誰かが、あなたが別の部屋でウトウトとしているときに、あなたの名前を呼んだとする。呼ばれたからといって、あなたはその人のところにすぐに行きますか?」

https://news.yahoo.co.jp/articles/e087fedb32a8b57780ee461dace593ead72694be