FIFA会長、カタール批判は西側諸国の「偽善」 W杯開催国の人権問題めぐり

20日に開幕するサッカー・ワールドカップ(W杯)の開催国カタールについて、性的少数者の扱いや人権問題などをめぐり、西側諸国から批判の声が上がる中、国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長は19日、西側諸国の批判は「偽善」だと非難した。
インファンティーノ会長はドーハでの記者会見で1時間近く異例の熱弁を繰り広げ、カタールとW杯を擁護した。
カタールでの移民労働者の死亡やLGBT(性的マイノリティー)の扱いなどの問題が、今大会に影を落としている。
スイス生まれのインファンティーノ氏は、欧州諸国はカタールの移民労働者の問題に注目するのではなく、自国の歴史の中で行った行為を謝罪すべきだと述べた。

インファンティーノ氏はこう切り出した。「私は今日、強い思いを抱いている。カタール人、アラブ人、アフリカ人、ゲイの人、障害者、移民労働者の気持ちを感じている」。
また、「私たちは欧米人や西側諸国から多くの胸腔を学んできた。私は欧州人だ。我々は道徳について説教をする前に、世界中で3000年間やってきたことに対し、今後3000年間、謝罪し続けるべきだ」とした。
「もし欧州が本当にこの人たち(移民労働者)の運命を案じているのなら、カタールのように合法的なルートを作り、多くの労働者が欧州に来て働くことができるようにすればいい。彼らに未来と希望を与えるために」
「私は(カタールに対する)こうした批判が、なかなか理解できずにいる。我々はこれらの人を助け、教育を受ける機会や、より良い未来と希望を与えるために、投資しなくてはならない。私たち全員が、自分自身を教育する必要がある。完璧(かんぺき)でないことはたくさんあるが、改革や変化には時間がかかる」
「この一方的な道徳教育は、ただの偽善に過ぎない。2016年以降のここ(カタール)での進歩を、なぜ誰も認めようとしないのか」
「12年前の(開催国)決定に対する批判を受けるのは簡単なことではない。カタールは準備できている。史上最高のワールドカップになるだろう」
「私がカタールを擁護する必要はない。彼らは自分たちを擁護できるので。私が守るのはサッカーだ。カタールは進歩したし、他の多くのことも変わったと感じている」
「もちろん私はカタール人でもアラブ人でもアフリカ人でもゲイでも障害者でも移民労働者でもない。しかし、彼らの気持ちを感じている。外国で外国人として差別され、いじめられることの意味を知っているので」
「子どものころ、私は赤毛でそばかすがあった。そのせいでいじめられたことがある」

英紙ガーディアンは昨年2月、カタールがW杯開催国に決まって以降、インド、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、スリランカからの出稼ぎ労働者が計約6500人死亡していると伝えた。この人数は、カタールにある各国大使館の統計に基づくものだった。
一方、カタール政府は、それらの死者が全員、W杯関連プロジェクトで働いていたわけではないとし、総数は誤解を招くと主張した。2014~2020年にW杯スタジアムの建設現場で死亡したのは37人で、そのうち「業務関連」で亡くなったのは3人に過ぎないとしている。
しかし、 国際労働機関(ILO)はカタール政府は過小評価していると指摘している。

https://www.bbc.com/japanese/63673026