今回の展示を締めくくる作品の一つ、「ATOKATA」を発表した際も周囲からこうくぎを刺された。
https://i.imgur.com/8aqk9Hs.jpg
「この作品についてはあまりしゃべらないほうがいいですよ」
写っているのは多くの写真家が訪れた東日本大震災直後の東北地方沿岸部。
しかし、篠山さんのような視点で写した作品は見たことがない。
「当時はほんと、何にもわからず、現場に行ったんですよ。とにかく、見たことのない光景だった。
初めは、撮ってもいいのかなとか、撮ることに意義があるのかな、と思ったり、おびえたり。
でもね、結局、4回行くんです」
何が篠山さんを引きつけたのか?
「こんな言い方をすると、被災者に対して失礼な言い方かもしれませんけれど」と前置きしたうえでこう語った。
「なんか、すごい光景、というのを通り越してね、美しさというものを感じたんですよ。
最初は無残で、残虐な風景だと思ったけれど、それがだんだんと、自然が自らを壊し、
つくり出した新しい風景じゃないかって。こんなふうに自然は新しい世界をつくり上げていくんだなと」
さらに、「現代美術の美術館の中を歩いているような気もした」。
「ほんとうにそうなんですよ。いや、現代美術の作家は負けているなと思った。こんなにすごいことできないじゃん、と」
自然を畏怖する気持ちとともに、尊大ともいえる自然の力、偉大さを感じた。
「それを撮っておきたいな、と思って、シャッターを切ったのがこの作品。
でも、褒めてくれた人はほとんどいませんよ。やっぱりね、社会の風潮には反するだろうし」
https://dot.asahi.com/dot/photoarticle/2021052400008.html