あるテレビ番組で、日本の小学校のマラソン大会を視察したフィンランドの小学校の校長先生が、子ども同士の競争や順位づけに疑問を呈し、それがSNSで話題になったことがあった。2020年のことだ。

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 フィンランドの教育は子ども同士で競争させることを嫌う傾向が強いが、その校長先生の意見は個人的なものというよりも、2014年に教育庁が出した小中学校教育計画の考えに沿うものだった。国の方針として、体育での競争はしないことになったのだ。

 このほかにも、日本とフィンランドの体育教育や部活動には、大きな違いがいくつも見られる。
名称からして異なる

 ここではフィンランドの体育と部活に当たる活動を紹介しつつ、日本と比較し、その違いを考えてみたい。そもそも名称からして異なり、日本の体育に当たる教科は、フィンランドでは 「運動(リークンタ)」と呼ばれる。それは、「動く」「動かす」という動詞から派生し、体を動かすことを意味する名詞だ。

 ヒトは、生まれた時から老年に至るまで何らかの形で体を動かしている。また、健康のためには年齢を問わず、積極的に体を動かすことが望ましいので、行政は設備や環境を整えてそれを支援する。

 フィンランドでは、教育文化省が生涯にわたって学び続ける生涯学習を推奨している。その考えからすると、学校での運動は、将来も続けていく運動の始まりであり一部でもある。つまり、学校という場所と時間に限定されない社会的な広がりを持っている。

 一方、日本の体育は「知育・徳育・体育」という学校教育の3つの支柱の1つである。それは、「日本型学校教育」として教育課程に組み込まれ、その中で完結するものでもある。

 また、「社会に出る」という表現が示すように、日本で学校は社会の中にあるのではなく、社会から分離されているかのように位置づけられている。まず、こうした認識の違いがあることを確認しておきたい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/292304aab8c37eaf20ce8ab8c5632b3504a1b07b