
資材高騰を受け、酪農家の離農が加速していることが分かった。日本農業新聞が全国10の指定生乳生産者団体(指定団体)に生乳の出荷戸数を聞き取った結果、10月末は約1万1400戸と半年前の4月末に比べ、約400戸(3・4%)減。2021年の同期間の約280戸(2・3%)減に比べてペースが加速している。各指定団体は、飼料高による経営悪化を理由に挙げる。
11月下旬に、酪農家から生乳を受け入れ販売する全国10指定団体に取材した。出荷戸数減にはごく一部に系統外への離脱も含まれるが、ほとんどが離農とみられる。
農水省の農業物価指数によると、飼料は7月以降急激に高騰。飼料価格は2020年を100とした指数で、昨年後半から120台と上昇していたが、今年7月からは140を超える水準が続く。配合飼料だけでなく、「粗飼料高騰の影響が一番大きい」(近畿生乳販連)とみる地域もある。北海道では、副産物となる初生牛などの市場価格急落も要因となったとみられる。
今年10月末までの半年間の出荷戸数減少率は、四国を除く全地域で前年同時期を上回った。減少率が4%を超えたのは東北、関東、東海、近畿。昨年の同期間の減少率は、全地域とも1~2%台だった。関東生乳販連は「減少ペースが去年の4割増し」、九州生乳販連は「この1年は去年の倍のペースで離農者が出ている」という。若手・中堅での離農も出始め「後継者不在の高齢農家だけでなく、中堅農家が経営中止している」(東北生乳販連)、「中堅農家がこれだけ離農・離農検討をする状況は過去になかったのではないか」(近畿生乳販連)とする地域もある。
離農の加速により、生産基盤が損なわれる懸念も強まる。生乳の需給緩和を受け各地域で生産抑制に取り組んでいるが、一部では「生産調整の割り当て以上に乳量が減ってしまっている」(九州生乳販連)とする。北陸酪連も「数年後の不足感に懸念がある」としている。
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