メタバース時代に注目すべきGAFAMは、モバイルへの移行に乗り損ねたマイクロソフトかもしれない。

Xboxを世に送り出した2001年、投資家はもちろん社内からも、ゲーム部門は必要なのか、むしろないほうがいいのではないかと疑問の声が上がった。

対して創業者であるビル・ゲイツ会長は、CEOがスティーブ・バルマーからサティア・ナデラに代替わりした3カ月後、「ナデラがXboxをスピンオフすると言うなら自分はそれを心から支持する。ただし今後はゲーム戦略が不可欠になるので、どうすべきかは意外に難しい」と表明している。

そして、ナデラはマインクラフトの買収を決断。数十億ドル規模の大型買収だ。しかも、提供プラットフォームをXboxとウィンドウズに限定しなかった(Xboxやウィンドウズなら一段よくなるようにもしなかった)。いまなら当たり前に思えるが当時はあり得ないと言われていた考え方である。

この方針が功を奏し、『マインクラフト』はユーザー数が買収当時の月間2500万人から1億5000万人へと6倍にも増え、世界で2番目に人気の高いリアルタイムレンダリング3D仮想世界となった。

いま、ゲーム体験はマイクロソフトに限らず業界の最前線となっている。特に『マイクロソフトフライトシミュレーター』は、技術面でもコラボレーション面でもすごい製品である。

目標は、バーチャルな飛行機を飛ばすこと。しかも、リアルなフライトそっくりに手間暇をかけて、だ。

2020年版のマップは5億平方キロメートル以上とリアルな地球に匹敵するし、個別レンダリングの木が2兆本もあるし(1本を2兆回コピーペーストしたのでもなければ、数十本をコピーしたのでもない)、建物も億棟、さらには、実際地上にある道、山、都市、空港もほぼすべてあるのだ。すべてがリアルにそっくり。MSFSの仮想世界はリアルを高精度スキャンしたイメージがもとになっているからだ。

開発はXboxゲームスタジオだが、ビングマップの協力を仰いでいるし、無償で使えるオンライン地図の共同作業プロジェクト、オープンストリートマップスのデータも活用している。さらに、データをまとめて3D化したり気象データをリアルタイムに反映させたり、クラウドからストリーミングしたりしているのはアジュールの人工知能である。

またXbox部門にはハードウェアスイートもあれば、世界一の人気を誇るゲームストリーミングのクラウドサービスも、ゲームスタジオもあるし、独自エンジン各種もある。

さらに、マイクロソフトは、2022年1月、中国を除く世界で一番大きな独立系ゲームパブリッシャー、アクティビジョン・ブリザードを750億ドルで買うと発表し(GAFAM史上最大の買収劇である)、その際、「この買収により、モバイル、PC、コンソール、クラウドにまたがるマイクロソフトのゲーム事業は今後一層発展するでしょう。また、アクティビジョン・ブリザードはメタバースの構築に必要な各種材料を提供してくれるものと期待しています」と語っている。

https://president.jp/articles/-/64006