パスポートを返さず私生活拘束…家事支援で働くフィリピン人女性がパワハラ被害、内閣府が行政指導
国家戦略特区による規制緩和を活用して入国し、炊事や洗濯などの家事支援労働に従事するフィリピン人女性がパワハラなどを相次いで訴え、事業を所管する内閣府が関係事業者に改善を求める行政指導を行っていたことが分かった。パスポートを預かって長期にわたり返却しないなど私生活を拘束する行為もあり、外国人労働者の人権擁護の在り方が改めて問われている。
取材に応じた女性らは、人材を送り出すフィリピンの業者から、私生活を縛る誓約書へのサインを求められた、と証言した。「ボーイフレンドなどのパートナーをつくらない」「(3年の雇用契約を守れない場合)斡旋あっせんにかかった全費用を負担する」といった内容だったという。
来日後、家事代行会社での研修中には職員から、複数のフィリピン人女性が「へたくそ」「フィリピンに帰れ」と強い口調で叱責しっせきされた。殺虫剤のスプレーを向けられ「これをかけたら、あなたも死ぬね」と言われたこともあったという。
こうした苦情が複数のフィリピン人女性から寄せられたため、内閣府はフィリピン政府を通じ確認を求めた。昨年6月以降は、パワハラの訴えがあった家事代行会社「ピナイ・インターナショナル」(東京都目黒区)への監査を実施した。
監査では、退職を希望した女性のパスポートを預かって長期にわたり返却しないなどの行為が判明した。内閣府は今年8月、ピナイ社の行政指導に乗りだし、フィリピン人女性からの苦情をきちんと聞くことのほか▽パスポートを長期間預からない▽契約期間満了前の退職希望者に違約金を請求しないよう、送り出し機関に確認する▽有給休暇取得へ配慮をする—ことなどの徹底を求めた。
ピナイ社の茂木哲也社長は取材に対し「職員たちはパワハラを否定している。女性たちと意思疎通できていなかったのが問題。パスポートはすぐ返却するよう改めた」と述べた。
ピナイ社のウェブサイトによると、同社には2020年現在で約80人のフィリピン人が在籍。社長の茂木氏はチャンネル登録者約70万人の人気ユーチューブ番組「令和の虎CHANNEL」で、起業を目指す人の事業計画を聞いて出資を決める投資家側として複数の出演経験がある。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/219253